松岡功の一言もの申す

IBMとセールスフォースの提携にみるITベンダー同士の新たな協業形態

松岡功 2017年03月09日 12時00分

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 IBMとSalesforce.comが米国時間3月6日に発表したAI(人工知能)分野での戦略的提携は、ITベンダー同士の新たな協業形態とも見て取れそうだ。

「Watson」と「Einstein」をシームレスに連携

 両社の発表によると、IBMのコグニティブコンピューティング技術「Watson」とSalesforce.comのAIプラットフォーム「Einstein」をシームレスに連携し、企業がさらに高度な顧客エンゲージメントを実現できるようにするとしている。

 具体的には、2017年後半までにWatsonの各種APIをSalesforceのアプリケーションに実装し、Watsonから得られる社内外のビッグデータの予測分析と、Einsteinから得られる顧客データの予測分析を組み合わせることによって、セールス、サービス、マーケティング、コマースなどにわたってより迅速な意思決定を行えるようにするという。

 詳しい発表内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは発表資料に笑顔で並んだ写真を掲載したIBMのGinni Rometty CEOとSalesforceのMarc Benioff CEOのコメントを記しておこう。

 「企業においても個人においても、あと数年のうちにすべての重要な意思決定は、AIとコグニティブコンピューティングの助けを借りるようになるだろう」(Rometty氏)

 「EinsteinとWatsonの組み合わせは、ビジネスをよりスマートにし、私たちの顧客のさらなる成功を実現する。IBMとの協業を大いに楽しみにしている」(Benioff氏)

(出典:IBMの発表資料)
笑顔で並ぶIBMのGinni Rometty CEO(右)とSalesforce.comのMarc Benioff CEO
(出典:IBMの発表資料)

AIを軸にITベンダー同士の協業が活発化する可能性も

 両社の提携の全体イメージとしては、すでにさまざまな産業分野で適用されつつあるWatsonのノウハウをEinsteinの技術と組み合わせ、Salesforceユーザーに広げていこうとの流れが最も大きいように感じられる。WatsonとEinsteinのシームレスな連携によって、IBMとしてはSalesforceユーザーをWatsonユーザーとしても取り込もうという思惑があるように見て取れる。

 一方、Salesforceとしては昨年後半から提供し始めたEinsteinの活用領域を、Watsonと連携することでさらに広げるとともに、その流れを逆手に取ってIBMユーザーへもSalesforceアプリケーションを売り込んでいこうという思惑があるものとみられる。

 つまり、AI技術を軸とした協業によって、それぞれのユーザーに相互乗り入れしていくとともに、共同ソリューションを展開して新規ユーザーの獲得も積極的に図っていこうということで両社の思惑が一致したものと見て取れる。

 これまでAI技術を軸とした協業といえば、研究レベルでは産学、実用に向けては例えば自動車会社とITベンダーのように異業種間での取り組みが目立った印象があるが、いよいよ大手ITベンダー同士が手を組む協業形態がこれから本格的に動き出すのではないか。今回の両社の提携はその先駆けのような気がする。

 今回の提携は両社それぞれにも事情がある。IBMは直近の四半期決算で5四半期ぶりに増益を果たしたものの、売上高は19四半期連続で減少が止まらない。同社にとって反転攻勢に出る最大の商材となるのがWatsonだ。そのユーザーの裾野を広げる意味で、Salesforceとの協業は大きな弾みになるだろう。

 一方のSalesforceは、直近の四半期決算でも売上高が前年同期比27%増と成長路線をひた走っており、2018会計年度(2018年1月期)の売上高はいよいよ100億ドルを突破する見通しだ。ただ、同社にとってその成長に向けた大きなチャレンジとなるのが、Einsteinの活用だ。IBMとの協業がそのインパクトを一層高めるものになるのは間違いないだろう。

 さて、今回の両社の提携をにらんで、有力なAI技術を持つ他の大手ITベンダーが、これからどんな協業を繰り広げるか。大いに注目しておきたい。

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