--データ分析のスキルセットについて考えを教えてください。
スキルセットとしては基本的な集計スキルや集計結果から意味を見出す力、あとはビジネスの把握能力です。また、分析結果をもとに解決に向けてプロジェクトを推進できる力も重要です。
テクニカルスキルについては今後は機械学習や統計解析の専門知識があると仕事の幅が広がると思います。われわれのグループではレコメンドシステムに関する「ACMレコメンド会議」などの論文を読む会を月に1度開催し、技術をキャッチアップするようにしています。
また、ログデータの解析技術だけでなくアンケートやインタビューなどのユーザー調査データを扱うスキルを高めていくことも大切だと考えています。
例えばユーザーのアクションに至るプロセスの離脱率を見る「ファネル分析」を行えば、改善するべき場所はわかりますが、なぜそうなるのか、どうすれば改善できるのかを知りたい場合はユーザー調査が有効です。
--分析結果を共有する仕組みは何かありますか。
アトラシアンの(企業向けウィキ)「Confluence」というサービスを使っています。社内のイントラサイトとして使っていて、基本的にすべての文書が集約されています。Likeをつけられるので、話題になっている記事を見つけやすいですし、分析結果を上げておくと興味を持った人から相談を受けたり、時にはマサカリが飛んできたりします。共有はかなりできていると思いますね。
--データ分析者のキャリアをどのようにお考えでしょうか。
データ分析者のキャリアには2つの方向性があると考えています。1つはビジネスとデータを結びつけデータから価値を生み出すデータ活用の専門家になる道、もう1つはエンジニアリングスキルを身に着けて分析からシステム開発まで担当できる人材になる道です。
前者を目指す場合、スキルとしてはデータ分析の専門性に加えてマーケティングの知識や企画力、プロジェクトを推進する力などが必要になるでしょう。また課題解決志向のマインドセットも要求されます。私自身は前者のデータ活用の専門家になることを目標としています。
--今後のデータ活用における業界展望をお聞かせください
今後データ活用が当たり前になる時代が来ると思います。まだまだ活用企業としてはウェブ系が多いですが、他にも製造業や保険業、農業などでもデータ活用の取り組みが推進されてきています。それぞれの業界によって求められるスキルが異なると思いますので、データ分析者は自分の志向性やスキルにマッチした業界を選べるようになり、活躍の場が増えていくのではないでしょうか。
- 伊藤徹郎
- インターネット金融グループを経て、データ分析企業でデータアナリストとして様々な業種の企業を支援。その後、大手レシピサイトでデータ分析やディレクター業務などを経て、現在はFinTech企業でデータ分析やサービス開発などに従事。RとSQLをよく書いている。