独立行政法人水資源機構は、IoTを活用した職員支援システムを稼働させた。同システムは緊急時の防災業務に対応するもので、琵琶湖開発総合管理所が管理する14カ所の排水機場で4月1日に運用を開始した。
富士通のデジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」を活用し、タブレットやヘッドマウントディスプレイなどを使って、安全で迅速な運転操作を実現しようとしている。
ゲリラ豪雨や台風などでの専門職員の不在や、定期的な人事異動により防災対応経験者がいなくなることなどを想定し、機械設備の運転操作をほかの職員や未経験者でも確実に実施できるようにする。
職員支援システムのイメージ
同システムでは、富士通のAR統合基盤「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」を活用し、タブレットやヘッドマウントディスプレイのカメラでARマーカーを読み取って作業場所が特定される。対象の設備を特定だけでなく、設備に応じて関連情報を表示する。薄暗い場所や斜めの位置からでも精度良く認識できるマーカー認識技術により、円滑な現場作業を実現する。
作業者は、ディスプレイに表示される直感的で分かりやすいカード形式の作業手順に従うことで、不慣れな職員でもミスや迷いなく作業できる。手順通りに作業できない場合でも、富士通の作業情報管理システム「FUJITSU Enterprise Application AZCLOUD SaaS teraSpection」の遠隔支援機能により、専門職員が防災本部やほかの排水機場から現場の様子をカメラ映像で確認し、音声やディスプレイを通して作業を指示することも可能になった。
ミッションカードと作業指示システムの利用イメージ
カード形式の作業指示(ミッションカード)では、1ステップごとに構内図や設備写真を使って音声ガイダンス付きで手順を表示する。職員はタブレットやヘッドマウントディスプレイに表示されたミッションカードを確認する。
指示内容を音声ガイダンスで聞けるので、画面を注視せず一貫してハンズフリーで作業できる。ヘッドマウントディスプレイの場合は作業終了時に口頭で「はい」または「次」と返事をすることで音声認識され、次のミッションカードが自動で表示される。また、設備に張り付けられているARマーカーを内蔵カメラが読み取り、対象設備が正しいかどうかチェックできる。
現場の作業結果はクラウドに記録される。また作業履歴は報告書として任意フォーマットで出力できる。さらに、ARマーカー認識時には自動的に対象設備の写真が撮影され、作業結果の記録における職員の負担を軽減できる。
作業記録は作業場所とひもづけて管理されるため、作業情報管理システムから排水機場の地図を表示し、作業場所を表すピンを選択すれば作業履歴が閲覧できる。管理者は、クラウドに蓄積された履歴を閲覧することで、その作業が正しく実施されたか確認できる。
水資源機構では今後、作業情報管理システムを点検チェックシートの作成やデータの可視化、予兆診断分析(健全性評価)など、日々の保全業務にも活用していくことを検討している。