ドローンビジネスの夜明け

ドローン運行管理システムの現在--目視外飛行の実現に各国がテクノロジを競う - (page 4)

神原奨太(テラドローン)

2017-05-15 07:00

 米国ではNASAが船頭となって、UTMの開発・実証を進めており、GoogleやVerizonなど多くの大手企業、先述のLATASなどのスタートアップ、大学・研究機関など100以上の企業・機関を巻き込んで巨大な実証実験を押し進めている。

 またUTMというには少し早いが、アフリカではルワンダ政府が米国のZipline社と協力し、ドローンを活用した医療支援を始めた。血液や医薬品を運ぶのに、これまではバイクで6日間かけて配達していたところを、ドローンなら同等のコストで2時間で運ぶことができる。

 新興国では固定電話が普及する前に、スマートフォンが普及しているように、確立した配送インフラが整備されていない地域でのドローン配送が先に普及する可能性もある。このような地域では、早晩UTM構築の議論がなされていくと考えられる。

 これらに留まらず、オーストラリアでは2017年前半にUTMの実証が予定されていたり、ニューヨーク市は独自の予算でUTMの取り組みを進めており、政府レベルでUTMについての実証・法整備・住民理解の推進に取り組んでいる。

 さらにUTMに関する国際的基準策定のためのコンソーシアムも、各地で発足している。先述したGUTMAに加え、日本でもJUTMという協会が設立されている。JUTMには日本のドローン業界に関わる主要な企業が軒並み参画しており、この3月には福島県で大規模な実証実験を実施した。JUTM自体もGUTMAに加入しており、日本全体での、国際標準化を力強く進めている。

 以上概観してきたように、ドローン産業の発展と並行する形で、ミッションプランナー的機能・管制的機能、双方のUTMがさまざまなプレイヤーにより開発され始めている。

 ドローンの更なる普及につれUTMの必要性も増していくが、UTMの詳細なシステム連携に関してはさまざまな組み合わせが考えられる。ミッションプランナー同士で共通のインターフェイスを持ち、横串で全ドローンの運行情報を共有する形も米国では議論されている。

 一方、有人航空管制のように規制当局・航空管制当局が、一定の空域を管轄・モニタリング形も有力である。各国での実証が繰り返され、UTM全体のアーキテクチャがある程度収束しそうな段階で、各システムの詳細についても情報を提供する。

 いずれのあり方が正解というものではなく、業界全体の関係者が知見を集結し、ドローン産業発展のために最も適したUTM像を議論していく必要があるだろう。

神原 奨太
テラドローン株式会社 事業開発部 UTM(無人機運行管理システム)事業責任者
早稲田大学政治経済学部を卒業後、アクセンチュア株式会社入社。アクセンチュアストラテジー(戦略コンサルティング本部)にて、政府・国内外の民間企業の戦略策定・新規事業立案・業務改革に従事。2016年よりテラドローンの設立に参画。同年後半より現職。ドローン業界全体の国内外の情報を体系化し、テラドローンにおける戦略策定も兼務。ドローンビジネスを展開している。

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