座談会@ZDNet

IoTビジネスと組織--変革を担う「Day1カンパニー」の条件:座談会(3) - (page 5)

山田竜司 (編集部) 飯田樹

2017-06-07 07:00

 ZDNet:Bezos氏のヴィジョンが会社を統制させてしまったくらい強いものだったと。

 玉川氏:顧客志向というか、Amazonでは「カスタマーセントリック」という言い方をしています。「顧客の立場から見たら、Amazonが(利益を)得ることよりも書店が多いほうが大事だよね」ということで、みんな「そうですね」と忸怩(じくじ)たる思いを引っ込めました。

 松島氏:玉川さんが言われていることは大前提です。私も「UXリーダー」という職種が必要だという話をしているのですが、Bezos氏が言っているように、UXは簡単にいえば顧客の「Wow!」なので、それを実現するために、顧客そのものを中心に置くべきだというのが持論です。

 その次に必要なのはマネジメントで、これはスペシャリストをコーディネートするためです。UXを実現するために、水平協働のスペシャリストをどうコーディネートして、顧客の満足につなげるべきか。よく言われるのが、「UXリーダーが社内にいません」ということです。

 その時には、別の処方せんとして「エッジから行きなさい」と言います。今は大規模にインテグレートするような仕組みを投資をしても、この5~10年でガラッと環境は変わってしまいます。

 なので、一から仕組みを入れて可視化していき、最後に重厚長大な仕組みの本丸を変えればいいということです。これまでの、中期計画を立ててシステム化計画を立てて、投資案件を通して……みたいなプロセスではなくなるのでは。

 ソフトウェアビジネスそのものが変わるきっかけとなる道具としてIoTが存在しているのだ、と理解している経営者がどれだけいるのかは疑問です。

 玉川氏:クラウドの時も似たような話があったと思っています。2010年頃、7年前くらいに日本でクラウドと言った時に、ほとんどの最高情報責任者(CIO)が「クラウドは興味深いし使われると思うけど、IT部門の予算の8割は守りに使っている。既存システムを補修したり運用するので手一杯」と話しました。「本当は攻めにIT予算を使いたいけれど、使えるのは2割なので、その2割をクラウドに使うから」と。

 でも、7年経ってみるとそれでよかったと思っています。その8割の守りを無理やりクラウドに持っていっても良いことにはならないけれど、攻めのところでクラウドを使って、そこが成功すれば、クラウドのポーションが大きくなっていき、いつの間にか逆転している状態になる。

 その方が既存ビジネスを持っている大企業にとっては、良いやり方なのかなと思います。既存の仕組みを変えるのは、特に日本企業だとすごく難しい。

 欧米企業は激しくて、トップが変わると「既存を6カ月でやめなさい」みたいなことをやるほど強烈なリーダーシップです。それぞれの企業に合った変異のさせ方があるかなと思いますね。

 <第4回へ続く>

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