八子氏: つまり、「先を行っている製品やサービスを改めて自社で作らない」ことを大前提にしてくださいと申しています。今所属しているウフルが商材として持っている技術でも、巷に良いものがあれば、それを優先して使うこともあります。
そうしないと、スピードが落ち、物事が進みません。進まないとメリットが顧客に分かってもらえないのです。メリットが見えたらデータが見え始め、議論が始まります。それが極めて重要かなと思います。
ソラコムもそうですが、比較的わかりやすくて安い製品やサービスであれば、導入して効果を感じてもらいやすい。高ければ高いほど導入も検証もできませんし、「そんなにかけたのに、これだけか」と言われてしまいます。安価で早く作れてマーケットのなかで優位性があるものをどんどん組み上げて、さまざま企業と一緒になって作っていくのが大前提であり、フレームワークとしては重要と考えています。

ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼氏
玉川氏:IoTのビジネスの担い手が誰であるべきかについてですが、ざっくりと分けると、既存企業がやるのか、新しい企業がやるのかだと思います。既存企業でやるときの課題は、既存ビジネスがある中で新規ビジネスが作れるのかという、そもそも論があります。既存ビジネスがうまくいっているほど、新規ビジネスにリソースを割けないからです。
玉川氏先日、Amazon創業者のJeff Bezos氏が株主向けに出したレターが非常に興味深いものでした。「Day1カンパニーとDay2カンパニー」という言い方をしていて、新規ビジネスを生み出すのがDay1で、既存ビジネスを回す組織をDay2と呼んでいたんですね。それで言うと、常にDay1のマインドを忘れない企業がIoTビジネスの担い手になると思っています。
そういう意味では、コマツの場合は四家千佳史氏という強力なリーダーがいて、それを社長がバックアップしています。ジャパンタクシーだと、川鍋一朗さんという創業者一家の強いリーダーがいる。
両社ともものすごく強いリーダーシップと、舵取りができる力があることで決定が早い。Day1である企業の条件は創業者や強いリーダーがいて、それを会社がサポートしているか、もう1つは、何もないところで新しいビジネスを作ろうとしているベンチャー企業ですよね。
日本初のグローバルプラットフォームを提供する会社としては、日本からIoTのそういう強い企業が出てきてほしいなと思っています。実際、われわれの顧客で良いビジネスをしている会社はたくさんあります。
例えばチカクという企業は「まごチャンネル」というサービスを出しています。高齢社会向けに、スマホは使えないけどテレビは使えるおじいちゃんおばあちゃんが、テレビにつなげるセットボックスを使って、孫の画像と動画をすぐ見られるというものです。
また、ottaは、子供の見守りの仕組みを提供しています。地方都市ほど失われてしまっている地域の見守り機能をITで補おうということで、見守りデバイスを持ち歩く取り組みをしています。