Googleの人工知能(AI)囲碁プログラム「AlphaGo」は、世界最強とされる囲碁棋士、柯潔(カ・ケツ)九段に完勝した後、引退を発表した。では、AIが執筆活動や外科手術といった、囲碁以外の分野で人間を超えるのは一体いつになるのだろうか?
この疑問に対する答えを得るために、オックスフォード大学のFuture of Humanity Institute内でKatja Grace氏が率いるチームは、機械学習の専門家多数を対象に調査を実施し、AIが人間のさまざまな能力をしのぐようになるまでの年数を予想してもらった。そしてその中央値を求め、予想としてまとめた。
さまざまなものごとがAIによって実現される(確率50%)までの期間を年単位で示したグラフ
提供:Katja Grace et al/Oxford University/Yale University
その結果によると、高校の先生は2026年までに、AIによって執筆された小論文に眼を光らせなければならなくなるかもしれない。またトラックの運転手は2027年までに、人余りの状況になる可能性もあるという。
そしてAIは、2031年までに小売店での販売能力において人間を上回るようになるという。さらに専門家らは、AIが2049年までにベストセラーを執筆できるようになり、2053年までに外科医の仕事をこなすようになるとも予想している。
全体的に見た場合、50%の確率で、今後の45年であらゆる作業においてAIが人間の能力を超える、すなわちHigh Level Machine Intelligence(HLMI:高レベル機械知能)が実現し、120年ですべての人間の仕事が自動化されると回答者らは考えているという。
研究者らは、2015年に「Neural Information Processing Systems」と「International Conference on Machine Learning」という機械学習関連の有名な2つのカンファレンスで論文を発表した1634人の学識経験者に質問を投げかけ、352人からの回答を取りまとめた。
興味深いことに、研究者らはAIが世界最強の人間の囲碁棋士を打ち負かせるのは2028年あたり以降になると予想している。既に報道されているとおり、GoogleのAlphaGoは2016年に韓国の李世ドル九段を破り、ついこの間は世界最強と言われる中国の柯潔九段を打ち負かしたばかりだ。そしてGoogleは現在、AlphaGoの開発者らをDeepMind研究所での作業から、社会におけるより大きな課題を解決するための作業に振り向けようとしている。