人類は人工知能を使いこなせるのか--AIの未来と社会実装を議論

林 雅之

2017-04-06 07:00

 3月13~14日に、東京大学伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホールにて「AIネットワーク社会推進フォーラム」が開催された。本フォーラムは、申込みが総勢2000人を超え、海外からも多くのAIの分野の有識者が参加するなど、国内外で注目度の高いフォーラムとなった。

 このフォーラムを主催する総務省では、2016年10月に「AIネットワーク社会推進会議」を立ち上げ、『AI開発原則』の内容を具体化した『AI開発ガイドライン』の策定に向けた検討を行う開発原則分科会と「AIネットワーク化」の社会・経済にもたらす影響やリスクについて影響評価分科会にて検討を進めている(筆者も影響評価分科会に構成員として参加)。


モデレーターを務めた東京大学大学院情報学環教授 須藤修教授

 フォーラムは、G7やOECDなどにおける『AI開発ガイドライン』の策定に向けた国際的な議論の推進などを目的として、米国、EUなどの政府関係者や、民間からもAIの分野の国際的な議論をリードする国内外のトップレベルの有識者の参加による国際シンポジウムとして開催している。

 初日最後のセッションでは、「AIネットワーク化のガバナンスの在り方」をテーマに、AIネットワーク社会推進会議長である東京大学の須藤修氏をモデレータに、本セミナーの登壇者を中心に、パネルディスカッションが行われた。

 推進会議開発原則分科会技術顧問、東京大学大学院工学系研究科教授の堀 浩一氏は、AIネットワーク社会の進展により、人とAIとの境界線があいまいになり、責任の分担が難しくなった結果、人間とは何かと考え直すことや人間中心の社会を設計し直す必要性を指摘している。AIネットワーク社会では、これまでの研究者視点でなく、市民がどのように恩恵を受けるかという市民視点の重要性を強調した。


堀 浩一氏(推進会議開発原則分科会技術顧問、東京大学大学院工学系研究科教授)

 推進会議開発原則分科会長代理、東京大学大学院法学政治学研究科教授の宍戸 常寿氏は、グローバルガバナンスの適切で実効的な枠組みを形成していく必要性を示した。AIネットワーク化が進む社会で、安全・安心にAIを使いこなす援助をしていくことや利用者の利益保護の点を指摘した。

 AIネットワーク化の進展は、研究成果を活用しつつ事業者やエンドユーザーなどさまざまなステークホルダーが情報を共有し、継続的な対話を通じてコンセンサスをとり、イノベーションを促進していく流れになる。その中で、リスク対応で事業者側に過大な負担をかけることなく、バランスをとっていくことなどグローバルガバナンスの課題も挙げた。

 AIネットワーク社会の普及には、ベストプラクティスの共有を通じて得られた推奨モデルの共有が求められ、事業者は利用者に対して、自発的に推奨モデルの情報提供の必要性を説明した。

 AIネットワーク化には、さまざまなリスクも想定されている中、AI関連の保険に加入することでリスクを軽減し、利用を促進していくという視点の重要性も示した。

 政策面においては、AIの研究開発に関するガイドラインでは、開発段階だけではなく相互運用性を確保すること、さらにはAI活用に関するガイドラインについての議論を開始するべきといった点も指摘した。

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