ベンチャー育成企業Blenheim Chalcotのグループ技術責任者を務めるMark Ridley氏も、IT部門の内部やほかの部門で、機械学習や自動化の利用方法を確立しようとしている。Ridley氏は、現在のところAIは、多くの意思決定を素早く行うための手段として非常に優れていると述べている。
同氏は、この取り組みは、企業がディープラーニングの発展によるメリットを受け始めるまで続くと予想している。「そのメリットの裾野が広がるまでに、数年はかかる。しかし一度広がってしまえば、AIが人間の代わりに小さな意思決定を下し始め、興味深いことが起こり始めるだろう」とRidley氏は言う。
「その水準まで発展すれば、仕事に大きな影響を与える。人間の関与なしで簡単な作業ができるようになった社会に対して、企業の幹部がどう対処すべきかは、まだ分かっていない。AIとロボットの組み合わせは、人類の未来を考える上で非常に興味深い分野だ」(Ridley氏)
変革に備える
確実なのは、さまざまなタイプのAIが、企業やその従業員の仕事の進め方に影響を与えるということだろう。企業の変革を支援する企業であるthree25の暫定CIOを務めるChristian McMahon氏も、AIが短期的に与える最大の影響は、定常業務の自動化に止まる可能性が高いと考えている1人だ。
しかし、それで安心していいわけではない。McMahon氏は、AIはいずれ事業運営に激しい変化をもたらす可能性が高く、CIOはその変化に対する認識を深める必要があると述べている。「企業が今のうちに、これらのテクノロジを利用する、あるいは獲得する方法について、競争上の優位性を備えるために具体的な取り組みを進めておくことが重要であり、いくら強調しても足りない」と同氏は言う。
また、ほかの事業部門の役員にも果たすべき役割がある。TSBの最高マーケティング責任者(CMO)Peter Markey氏は、デジタルマーケティングの最先端を走っており、ビジネスデータと顧客からの要求を組み合わせて、革新的なサービスを生み出すことを支援するためにキャリアを費やしてきた。CMOはAIでも同様のことができる可能性があると考えているが、そのためには多くの努力が必要だと同氏は認めている。
「その考え方は素晴らしいと思うが、潜在的な可能性や限界について、十分に検討できているとは思わない。マーケティングを担当する人間は、ビジネスと個人的な関わりの間のバランスを取る必要がある。マーケティングプログラムをギリギリまで自動化することで、何かが失われるのかどうかは、まだ分からない」とMarkey氏は述べている。