こういったことは、必ずしも悪いこととは限らない。車輪から内燃機関まで、過去のあらゆる新技術は、よりよい新たな仕事を生み出してきた。重要なのは、自動運転車でも同じことが起こるようにすることだ。
PwCが最近発表した、未来の仕事に関するレポートには、次のように書かれている。「自動化と人工知能は、あらゆるレベルのビジネスと、ビジネスに関わる人間に影響を与えるだろう。この問題は、IT部門(あるいは人事部門)だけに任せるには大きすぎる。変化し続ける技術の動向を深く理解し、十分な知見を得ておくことは、必要不可欠だ」
この指摘は正しいが、IT産業のチャンスもここにある。AIの仕組みを理解しているIT産業には、どうすればAIを取り込みながら、単純に既存の雇用を破壊するだけに終わらせずに済むかを、ほかの産業に示す責任がある。IT企業やIT部門は、自らの振る舞いによって、AIや自動化は必ずしも雇用や労働者のスキルにとって悪いものではないと示す必要がある。新たなテクノロジを導入することで、破壊するよりも多くの仕事を生み出せると示さなくてはならない。これは、AIを単なるコストカットに使うのではなく、従業員が新たなスキルに対するニーズに順応するのを支援すべきであることを意味している。もしIT産業がAIの導入と適切な雇用の創出のバランスを取れないとすれば、ほかの産業に望みはあるだろうか。
AIは確かに大きなメリットを生み出すが、そこには検討が必要な大きな課題もある。自動化が進んだ後に、人材をどう再訓練するのか。1週間の労働時間や、従来のキャリアに意味はあるのか。そしてそのことは、社会の仕組みに対してどのような意味を持つのか。
これらの課題をすべて解決するには何十年もかかるだろうが、今日の企業の振る舞いは、将来の答えに影響を与えるはずだ。AIの本当の成功は、テクノロジよりも、AIが普及した際に影響を受ける人々を、どう扱うかによって決まると言っていいだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。