金融機関に限らないが、多くの企業で雑務処理にさまざまな無駄や不便が発生しており、これを解消するためのテクノロジが登場している。網野氏は「ロボットによる処理の自動化(RPA:Robotic Process Automation)もその1つ。ロボアドバイザーのように、機械ができることは機械に任せ、人はより効率化や生産性の向上を目指す、人にしかできない取り組みに注力すべきだ」と話している。
FinTechか既存のIT投資かを考えるのは時間の無駄
FinTechは、金融業界全体を大きく変革させるのか。それとも、金融業務の一部の変革にすぎないのか。ディッカーソン氏は、「FinTechの今後の在り方は、基本的には利用者側がけん引していくことになる。例えば、過去10年間で、わざわざ銀行の窓口に行かなくても、ほとんどの金融取引がネットでできるようになっている」と語る。ネットバンキングは、平日は忙しくて銀行に行けない利用者の要望に銀行が応えたものだ。
こうした取り組みの一環として、次の新しい金融サービスを生み出すためのテクノロジとして注目されているのが、FinTechと人工知能(AI)の組み合わせである。
ディッカーソン氏は「一部にせよ、全体にせよ、大きな変化の中で、今後、新たなビジネスを生み出していくためにも、より効率良くビジネスを推進するためにも、AIの活用がポイントになる。そのために必要なテクノロジを、DataRobotは提供している」と語る。
一方、金融業界におけるFinTechへの投資額はまだまだ小さいが、今後どのように変化していくのか。網野氏は「世の中の無駄や不便を解消する目的において、これはFinTechへの投資なのか、既存のIT投資なのかを考えること自体が無意味。日本企業では、FinTechへの投資とした方が、稟議が通りやすいので、テクニックとして使うのはいいが、FinTechか否かを考えるのは時間の無駄である」という。
「ギックスは、ビッグデータを取り扱う企業として創業約5年になるが、クライアントから“うちの会社はデータ量が少ないのでビッグデータはありません”といわれることがある。ビッグデータは、データ量の問題ではなく、データを活用していかに成果を出すかが重要なはず。FinTechも同じで、一生懸命に定義を考えるのではなく、その技術を活用することで、いかに成果が出るかを考えるべきである」(網野氏)。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のがDataRobot
FinTechにおいて、テクノロジは重要だが、テクノロジそのものが重要なのではなく、どう使うかが重要になる。網野氏は「最新のテクノロジで既存の仕組みを置き換えるのではなく、既存の仕組みをいかに効率化、自動化できるかを考えるべき。われわれもDataRobotを利用しているが、これまでのビジネスインテリジェンス(BI)ツールとは、一線を画したツールだと感じている」という。
これまでのBIツールは、プロフェッショナルが使うツールだった。統計解析やモデリングのプロが利用することで、一発必中の的確な予測が可能になる。一方、DataRobotは、統計解析などの専門知識がなくても、手軽に分析して結果を出せる、いわば「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のBIツールである。「ただ、そのためには、たくさんの弾(データ)を、いかに速く、正確かつ大量に作るかがポイントになる」と網野氏は言う。
網野氏は、「DataRobotを活用する場合、どのようなアナリティクスのプロセスを構築しなければならないかを考えた。必ず成功する分析結果を求めるプロセスには、専門的な知識が必要になる。一方、100個の分析結果から3つの成功を導く分析プロセスもある。どちらの成功が正しいかは状況により異なるが、いかにテクノロジを活用すれば、最も成果が出せるかを考えることが重要になる」と語る。
ディッカーソン氏は「DataRobotは、BI的なテクノロジだが、ほかのBIツールと違うのは、実際にビジネスを動かしている人たちが、自分たちの問題を解決できるツールであるということだ。自分自身、DataRobotのユーザーから、DataRobotに転職したのだが、ユーザーの立場でいろいろなツールを試してきて、DataRobotは機械学習の専門家のためだけではないツールであるということを十分に理解している」と話している。