意思決定を自動化できる時代まではAIよりもIAが重要
FinTechとAIの組み合わせは、金融業界にどのような未来を見せてくれるのだろうか。ディッカーソン氏は「今後、ブロックチェーンが、さまざまな分野で大きなインパクトをもたらすと考えている。例えば日本では、不動産登記をブロックチェーンで1つにまとめようという動きがあると聞いている。こうした分野にAIを組み合わせることで、現状では実現できない、新たな価値の提供が期待できると考えている」と語る。
ブロックチェーンがいろいろなところで使われるようになると、これまで電子化が難しかった不動産取引のような小さな単発の取引を電子化することができる。また、これまで与信にコストがかかっていたクレジットカード取引においても、コストを限りなくゼロに近づけることができ、キャッシュレスの世界を実現することもできる。この段階では、さまざまなデータを活用した、AI、機械学習、ディープラーニングも有効になる。
AIについて網野氏は、「最近、AIブームだが、コンサルティング業界では、“知能増幅(IA:Intelligence Amplification)”が注目されている。これまでは、顧客に価値ある提言をするために、時間と工数をかけて分析を行い、結果を出していた。DataRobotは、とりあえずの分析を繰り返すことで知識を増幅できる。機械が完全に意思決定してくれる時代がくるかもしれないが、それまではAIよりもIAが重要になる」と語る。
ディッカーソン氏は、「よく、“今後は機械学習がすべての問題を自動的に解決してくれるのか”と聞かれるが、答えは“ノー”だ。完全な自動化はまだ先で、どうしても人の介入が必要になる。ただし、大きな変化は、既に始まっている。現在のFinTechは、既存インフラの少ない途上国が先行し、先進国はまだキャッシュに依存している状況だが、この状況がどのように変化していくかを興味深く見守っていきたい」と話している。