新しいFinTechサービスが普及するためには、当然ながらマーケティングが必要である。ところが、これは思う以上に難しい。FinTechには従来のマーケティング手法があまり適していないと考えられるためだ。
しかし、筆者が最近ウェブマーケティングを支援する企業を調査する中で、新たな潮流が見えてきた。そしてそれは、FinTechに適したものと思われる。
既存メディアの特徴とFinTechマーケティングの問題とは
企業がマーケティングに取り組む際、予算にもよるが、マスメディアの活用が候補に挙がるだろう。ネットサービスやアプリでも、新規ユーザー獲得のためにテレビCMを選択することは珍しくなくなった。
テレビでは、スマートフォンのゲームやキュレーションアプリのCMを見ない日の方が珍しいかもしれない。また、情報番組や雑誌などでも製品やサービスが取り上げられれば、多くの集客が見込める。
マスメディアは、それまで製品やサービスを知らなかった人々にそれを認知させ、「買いたい」「利用したい」というように「気持ち」を変化させることに長けたメディアと考えられる。
提供:Laurent Delhourme, Getty Images/iStockphoto
例えば、旅行に行くつもりがなかった人が、なんとなく沖縄の旅行番組を見ているうちに、現地に行きたくなるというのは自然な話だろう。
ただし、FinTechがテレビで紹介されても同様の効果が得られるとは限らない。テレビや雑誌を見るのは年齢の高い層が中心で、若者ほどスマートフォンばかり見ているとされる。
特に高齢層はITリテラシーがあまり高くないと推測され、そもそもFinTechのユーザー層とは異なる可能性がある。
実際に、某経済誌でサービスが紹介されたFinTech企業から、期待したほどはユーザー獲得につながらなかったという話も聞こえてくる。
もちろん、比較的年齢が若くITリテラシーが高い層も、テレビや新聞などのマスメディアを利用しないわけではない。
ただし、テレビCMでユーザー獲得に効果を上げているのはゲームや、タブロイド紙のような記事を提供するキュレーションアプリである。
これらのユーザー層がFinTechの潜在ユーザー層とどの程度重なるのか、十分な広告効果を得られるのかについて検証が必要だろう。