FinTechの実際

ICOの本質と日本が推進すべき理由とは

小川久範 2017年11月22日 07時30分

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 ICO(Initial Coin Offering)が注目されている。ICOの定義はまだ定まっていないと思われるが、プロジェクトの開発資金を、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨により世界中から調達し、対価として電子トークンを提供するというのが共通の要素であろう。資金の調達側にとっては、他の調達手段よりも手間やコストがかからないことがメリットとされる。

 一方、資金の提供側は、対価として得た電子トークンが仮想通貨取引所で売買されるようになり、高値が付けば、大きな利益が得られる可能性がある。ICOは適法性の観点から議論されることが多いように筆者には思われる。しかし、その前段階として、ICOの本質と、われわれはどう向き合うべきか考えてみたい。

ICOの本質を考える上で必要な観点

 ICOの議論が適法性の観点から行われることが多いのは、そもそも違法と考えられるICOが多いためである。現行の規制はICOを想定していないため、これまでは各国の当局が明確な判断を示せない中でICOが行われてきた。ただし、最近は提供される電子トークンが有価証券に該当するかどうかに注視する国が増えてきている。有価証券に該当するのであれば、既存の法規制に従って募集を行う必要がある。調達側にとってICOのメリットとされる手間やコストがかからないというのは、本来であれば支払うべきコンプライアンスコストを省いていたに過ぎないことになる。

 他方、現在の法規制に抵触しないようにICOを行う方法も模索されている。ICOとは電子トークンを販売する行為に過ぎないという主張である。電子トークンには有価証券としての性質を一切持たせず、単なる電子データを提供する。資金の提供側には何も保証されておらず、電子トークンが仮想通貨取引所で流通するようになれば、もしかしたら儲かるかもしれないという期待感だけがある。

 現在のように仮想通貨の価格がバブルの様相を呈していれば、それでも電子トークンの購入を希望する人は少なくないだろう。ただし、仮想通貨の価格が下落局面に入れば、購入希望者は大きく減少し、資金調達は困難になると予想される。

 電子トークンを販売するということは、日本であれば調達額の8%を消費税として納付しなければならないことになる。また巨額の資金を調達した場合、そのほとんどが利益となる可能性があり、法人であれば法人税を支払わなければならない。国によっては、消費税と合わせて調達額の半分近くが税金に消えてしまう可能性すらある。電子トークンの販売という立て付けでのICOは、現在の規制を回避することはできるかもしれないが、資金調達の手段としては既存の手段よりも高コストと考えられる。

 上記を踏まえるとICOにおいては、電子トークンを有価証券として発行する方が、資金調達の手段としては優れているように思われる。その実現には、しっかりとしたコンプライアンス対応が必要である。その場合、既存の有価証券による資金調達手段で十分ではないかとの意見が出てくるのは当然である。

 ICOの正当性を認めるためには、そのメリットとされる手間やコストがかからないということ以外の理由が求められる。株式の新規上場と同じだけの時間とコストをかけてICOを行ったとしても、ICOは既存の資金調達手段に対して優位性を持つのであろうか。

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