問われる経営者のマネジメント力
では、企業は働き方改革において具体的にどのような取り組みを行っているのか。それを示したのが図3である。トップに挙がった「長時間労働の是正」については86%の企業が実施し、「業務の見直し」も62%が取り組んでいる。一方で、「組織風土改革」(47%)、「健康経営」(32%)、「パフォーマンスマネジメントの見直し/マネージャーの能力開発」(20%)、「RPA(ロボティックプロセスオートメーション)・AIの活用」(13%)など、一過性ではない課題解決につながる多様な取り組みについては半数以下にとどまっている。
図3:働き方改革の具体的な取り組み(出典:デロイトトーマツコンサルティング「働き方改革の実態調査2017」)
同社は図3の状況から、「長時間労働是正への取り組みが進む一方、組織風土面での変化は十分ではない」との見方で、組織風土について企業の実態を聞き込んでいる。それによると、「ある程度の長時間労働は仕方がないという雰囲気がある」(59%)、「時間当たりの生産性はあまり評価評価されない」(53%)、「長時間働いている人はがんばっている人だとポジティブに評価されることが多い」(45%)との見方が浮き彫りになった。
このデロイトトーマツコンサルティングの調査結果から、筆者が一言もの申しておきたいのは「働き方改革の目的を見失うな」ということである。働き方改革の目的は図1の通りで、特に上位3つが非常に重要だ。しかし、実態は図2のように従業員満足度の向上が十分な成果に至っていない。にもかかわらず、働き方改革の具体的な取り組みは長時間労働の是正が先行し、特に従業員の満足度向上に大きく影響する組織風土改革などはまだまだ道半ばだ。
改めて、どうすれば生産性および従業員の満足度を向上させていくことができるか。まさしく経営者のマネジメント力が問われているといえよう。