2014年にSatya Nadella氏がMicrosoftの最高経営責任者(CEO)に就任したとき、同氏は自問自答したという。それは、Microsoftの存在意義についてだ。
同社は数十年にわたって、すべてのデスクの上にコンピュータがある世界を作るという、明快な目標を追い続けてきた。しかし、Nadella氏が現在の地位に就くかなり前に、このミッションはほぼ達成されていた(そして、スマートフォンとクラウドコンピューティングが主流になるにつれて、時代に合わなくなり始めていた)。では、次は何を目指すべきなのか。
9月最終週にロンドンで開催されたイベントで、Nadella氏は「私がMicrosoftに入社した1992年、わが社はすべての家庭とすべてのデスクの上にPCがある世界を作ることが目標だと話していた。これは具体的で、分かりやすく、簡潔で、従業員に力を与える目標だった。なぜなら、Microsoftが何のための会社で、何を目指しているかが明確だったからだ」と語った。
「しかし90年代の終盤には、少なくとも先進国ではこの目標は達成され、その後は何を目指すべきかがあまり明確ではなくなった。そのため私は、2014年に自らの存在意義を問い直すべきだと考えた。Microsoftはなぜ存在しているのか。自分自身と、仲間みんなのために、この問いに明確な答えを出そうとした」(Nadella氏)
意外に思う人もいるだろうが、Nadella氏はMicrosoftが最初に作った製品である「Altair 8800」用のBASICインタプリタを振り返って、この問いへの答えを得たという。
「そこには、私たちが何者であるかを示すすべてが詰まっていた。わが社は、他の人がテクノロジを生み出すためのテクノロジを作る会社なのだ」と同氏は言う。
「地球上のあらゆる場所にいる人々や組織に、もっと多くのことができる力を提供すること。それが、私たちのキーワードだ。重要なのはわが社のテクノロジではなく、わが社のテクノロジで、他の人は何ができるかだ」(Nadella氏)
「私は、仲間たちにこの目的の感覚を取り戻してほしかった。Altairの頃とは時代が違うため、『ルーツに立ち戻って、Altair用のBASICインタプリタをもう一度作ろう』というのは無理だが、量子コンピュータのための開発ツールを作ることはできる」と同氏は話す。
Nadella氏は、攻めの姿勢が強いことで有名なMicrosoftの文化を変えるのは、簡単ではなかったと認める。例えば、Microsoftの経営チームに良質なコミュニケーションを促すために、「非暴力的」なコミュニケーションについて本を紹介することまでしたという。
問題の一部は、幹部たちが「的確な質問」をするためのトレーニングを受けていたことにあった。
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