Microsoftの最高経営責任者(CEO)Satya Nadella氏が執筆した初の著書「Hit Refresh: The Quest to Rediscover Microsoft's Soul and Imagine a Better Future for Everyone」(リフレッシュキーを押せ:Microsoftの精神を再発見し、あらゆる人のためにより良い未来を思い描くための旅)が米国時間9月26日にHarperCollins Publishersから出版された。この著作からは、Microsoftの3代目CEOであるNadella氏がいかに同社の再活性化に注力してきているのかが見て取れる。
Microsoftに関する記事を数十年にわたって執筆してきている筆者は、同社の歴代CEO、すなわち、向こう見ずなところもありながら聡明(そうめい)なBill Gates氏と、エネルギッシュで大仰なSteve Ballmer氏、そして地味ではあるものの思慮深いSatya Nadella氏の3人全員にインタビューをしてきている。
Bill Gates氏(左)、Satya Nadella氏(中央)、Steve Ballmer氏(右)
提供:Microsoft
筆者は、Microsoftに昔から関わってきたため、初期の頃の同社の弱肉強食的な社風や多くの幹部の考え方を理解している。当時は、IT分野の報道も激しい競争下にあった。特ダネによって競合をたたきのめし、圧倒するというのが常套手段であり、取材対象の業界と同様、勝者がすべてを手にするという雰囲気が漂っていた。
こうした経歴を持つ筆者は、テクノロジ業界に対するアプローチはNadella氏のものよりもGates氏やBallmer氏のものの方が理解しやすいと感じていた。
CEOとしての最優先の仕事は企業文化の醸成であるべきだというNadella氏の主張を目にした際(この主張はCEO就任直後になされたものであり、同書にも記されている)、筆者は正直なところ、驚くとともに困惑した。それは人事部門の仕事だと考えていたためだ。CEOはそのようなことではなく、競合をたたきのめすとともに、市場シェアをより多く獲得するための巧妙な手段を考え出すために力を注ぐべきではないのだろうか?「企業文化は戦略を圧倒する」という考え方は筆者にとって、責任逃れのように感じられたのだ。
それでも筆者は、Nadella氏の著書に興味を抱いた。というのも本書が、同社の新たなCEOをCEOたらしめているものを説明するだけでなく、同氏によってソフトウェアおよびサービスの大手企業である同社にどのような変革がもたらされているのかを垣間見せてくれるという触れ込みであったためだ。