第6回:要件定義文書を取りまとめ--不採用要求も整理、記録が必要

山下博之 (IPA/SECシステムグループリーダー)

2017-10-20 07:00

 「住まいを購入するまでのプロセスは、システム開発における要件定義とよく似ている」をコンセプトに、要件定義のプロセスを解説する本連載。今回は、要件定義文書を取りまとめるプロセスを解説していく。拡大する要求を目的と制約に照らして取捨選択、調整し、どのように要件を整理するのか…。まずは千石君の「家づくりプロセス」から見ていこう。

家づくり編:現実と将来を見据え、適切な仕様に落ち着く

 前回、夢のマイホームに対するそれぞれの希望を出し合った千石夫妻。仕様確定期限が迫る中、このままでは収拾がつかないと考え、冷静にお互いの要求を再整理することにした。

千石夫人:私たちの要求をすべて満たすには、到底資金が足りないわ。いくらまで出せるのか、はっきりさせないと話が進まないわね。

千石君:そうだね。今のところ、確実に用意できる資金をリストアップすると、次のようになるよ。

手持ち預金: 300万円
住宅積立金:1000万円
住宅ローン:4000万円(30年返済)

千石夫人:合計5300万円じゃ全然足りないじゃない。土地代だけで4000万円かかるのよ。1300万円で建てられる家なんて、カスタマイズができないプレハブ住宅ぐらいだわ

千石君:うん。今さらだけど、考えが甘かった。年収に見合った返済額とか、今後の教育費なんかを考慮すると、あまり多くのお金を借りることは難しいんだ。というか、あとの生活が大変になるんだ。

千石夫人:……あと200万円ぐらいなら何とかなるわよ。

千石君:えっ?

千石夫人:学生時代から前の会社を辞めるまで、少しずつ貯めていたお金があるの。本当は、私の趣味のために取っておきたかったのだけど。

千石君:へそくりを出してくれてありがとう。さすが、僕の奥さんだ。

千石夫人:これ以上は出ないわよ。…本当よ。

千石君:念押しをしなくてもいいよ。あとの足りない分は節約して何とかしよう。

千石夫人:あなたが頑張ってもっと稼ぐって選択肢はないの?

千石君:今関わっているプロジェクトが成功すれば、会社の利益も増えるし、僕の実力も評価される。頑張るよ。

*****

 とはいえ、昇給を期待して家を建てるわけにはいきません。千石君は自分の両親に相談し、1000万円を支援してもらう約束を取り付けました。こずるいですね。ともあれ、最終的に計7000万円の資金を確保ができました。うち、土地代を除くと、家の建築に使えるのは3000万円です。

手持ち預金: 500万円
住宅積立金:1000万円
住宅ローン:4500万円 (30年返済)
親から借用:1000万円

*****

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ChatGPTに関連する詐欺が大幅に増加、パロアルトの調査結果に見るマルウェアの現状

  2. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  3. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  4. セキュリティ

    いま製造業がランサムウェアに狙われている!その被害の実態と実施すべき対策について知る

  5. セキュリティ

    ランサムウェア攻撃に狙われる医療機関、今すぐ実践すべきセキュリティ対策とは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]