本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTコミュニケーションズの庄司哲也 代表取締役社長と、日本IBMの高瀬正子 レジリエンシー・サービス事業部長の発言を紹介する。
「日本のAIはもっとサービス化に注力しなければいけない」
(NTTコミュニケーションズ 庄司哲也 代表取締役社長)

NTTコミュニケーションズの庄司哲也 代表取締役社長
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が先頃、都内ホテルで開いたプライベートイベント「NTT Communication Forum 2017」での庄司氏の基調講演後に、同氏がプレスとの囲み取材に応じた。冒頭の発言はその場で、NTTをはじめ日本の人工知能(AI)技術は世界で通用するか、と聞いた筆者の質問に答えたものである。
庄司氏はイベントの基調講演で、NTT ComのAI分野の取り組みについて、NTTグループのAI技術群「corevo」のうち、自然言語系の「COTOHA」や分析系の「時系列ディープラーニング」を活用したサービスの開発および提供に注力していると説明。COTOHAはコンタクトセンターやチャットボットなど顧客との接点で、時系列ディープラーニングは工場における生産性向上や品質改善などで、それぞれ活用されているという(図参照)。

図:NTT ComのAI分野の取り組み
基調講演後の囲み取材で、筆者が聞いた上記の質問に対する庄司氏のフル回答は次の通りである。
「NTTのAI技術が海外ベンダーのものに比べて劣っているとは思わない。例えば、当社が提供しているCOTOHAは、日本語に対応した言語解析エンジンとして他の追随を許さないと自負している。しかし、AIを実際に活用できるようにするためのサービス展開や、プレゼンスを向上させるための取り組みという点では、海外ベンダーに後れをとっているように見られても仕方がないところがある。従って、私どもとしてはAIをこれからもっと分かりやすいサービスとして提供するとともに、プレゼンスを一層高めていく手立てを講じていきたい」
冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。
庄司氏はさらに、「当社としては今後、自然言語系AIと分析系AIによる2つのアプローチで、得意分野を中心にAIを活用したサービスをお客様にお届けしていきたい。ただ、その際、私どもの技術だけでは足りないところがあれば、グローバル市場で有効な技術を取り込んで組み合わせた形にして最適なサービスを実現していきたい」とも語った。
その意味では、2017年10月11日掲載の筆者コラム「グーグルとNTT Comの“未来志向”提携は何を生み出すか」にもあるように、パートナリングの推進も重要なポイントになってくるだろう。
NTT Comは今、キャリアからクラウドを中心としたICTベンダーに変身しつつあるが、もともとのNTTの技術力をもってAI分野でも面白い存在になるかもしれない。大いに注目しておきたい。