BlackBerry 最高経営責任者のJohn Chen氏
BlackBerryがモバイルセキュリティを中心としたソフトウェアとサービス企業への転身を進めている。変革の道筋と戦略を固め、同社を牽引する最高経営責任者(CEO)のJohn Chen氏は、2000年代にSybaseのCEOとして行った立て直しを評価され、2013年にBlackBerryのCEOに就任した。BlackBerryが10月、ロンドンで開催した「BlackBerry Security Summit」でChen氏がメディアグループの取材に応じ、新しいBlackBerryの戦略などについて質問に答えた。
――Security Summitでは自動車向けのコンサルティング事業を正式に立ち上げた。自動車分野は今後のBlackBerryにとってどのような位置付けになるのか?
Chen氏: 自動車はとても重要で、我々の売り上げに大きな影響をもたらすだろう。
自動車では組込みソフトウェアのQNXが土台となる。QNXは車載インフォテイメントの土台プラットフォームとして知られており、QNXベースの車載インフォテイメントシステムを搭載した車は世界に1億1000万台ほどある。シェアにして半分程度と言える。
だが、これだけではない。我々は3年ほど前から、QNXを車載インフォテイメントから拡大している。車載インフォテイメント市場は成熟市場であり、現在、車・車間通信(V2V)、OTA(Over The Air)、高度なドライバー支援、クラスタなど多数のモジュールを追加している。QNX事業の70%が自動車からだが、今後は医療機器など他のデバイスにも用途を拡大していく。
――Enterprise of Things(EoT)を提唱している。
Chen氏: EoTは、企業におけるエンドポイントの安全な管理を実現するものだ。ユニファイドエンドポイント管理(UEM)プラットフォームと組込みソフトウェアで実現する。EoTにはたくさんの垂直業界があり、自動車はその一つとなる。
――新しいBlackBerryの戦略はセキュリティにフォーカスしている。セキュリティはプレイヤーが多く、競争も激しい。競争のシナリオは?
Chen氏: 競争はとても面白い。市場が大きくなければ競合はないので、市場が大きいということを意味する。Microsoft、IBM、Samsungなど、競争しつつ協力もしている。例えば、Microsoftとは「Office 365」で協業している。MicrosoftのCEO、Satya(Nadella氏)とは、「意味のある形でコラボレーションしよう」と話している。また、SamsungのKNOX(Samsungのエンタープライズモバイルセキュリティソリューション)ではKNOXサーバで協業しており、BlackBerryはKNOXを再販できる。我々のUEMはSamsung KNOXも管理できる。
このように、市場が大きければ必ず競争があり、競争が市場を進化させる。BlackBerryの差別化とは、我々は最高レベルのモバイルセキュリティソリューションを持つという点だ。BlackBerryの前身であるResearch In Motionはページャーを作っていた。モバイルファースト企業であり、モビリティと安全性について知識とノウハウを蓄積してきた。Gartner、451 Groupなどアナリストからの評価も高く、顧客やパートナーも我々の技術力を知っている。
戦う材料はそろっている。競合は心配していない
――日本市場での活動は?
Chen氏: 日本オフィスのエンタープライズサポートチームとQNXチームが顧客をサポートしている。
――トヨタ自動車がAutomotive Grade Linux(AGL)の採用を発表している。QNX事業に与える影響は?
Chen氏: トヨタ自動車はAGLに参加しており、AGLのインフォテイメント技術を試すことを明らかにした。AGLのテストは「カムリ」ラインのみで、小規模なものと理解している。このテストがうまくいくかどうか分からないし、カムリ以外は現在もQNXを使っている。
我々が重視していることは、トヨタにインフォテイメントだけではなく、BlackBerryが持つ安全性、クラスタリング、OTA、テレマティクスなど他の技術を使ってもらうことだ。現在、トヨタとはインフォテイメントのみであり、今後これを拡大したい。