現在のスマートフォン市場は、iPhoneとAndroidの2大勢力で占められているが、2000年代の同市場には、エンタープライズ向けの「BlackBerry」も存在した。しかし現在のBlackBerryは、往時のような端末メーカーではなく、エンタープライズモビリティを手掛けるソフトウェア企業だと、同社の日本アジア太平洋地区営業統括バイスプレジデントのPaul Crighton氏は語る。
当時のBlackBerryは事業ブランドであり、社名は「Research In Motion」(RIM)と呼ばれた。RIMは1990年代後半のページャー(ポケベル)の開発・製造を契機に、スマートフォン時代の黎明期には、企業内システムから端末までの通信経路もカバーするEnd to Endのモバイルソリューションを展開。メインユーザーは、米国大統領をはじめとするエグゼクティブ層や高いセキュリティレベルが要求される組織だった。
だが、iPhoneとAndroidの台頭によってコンシューマーにもスマートフォンが急速に普及する過程でBlackBerryのシェアは徐々に低下していく。2013年に社名をRIMからBlackBerryに変更したが、同時期に日本での端末販売から撤退するなど、この頃が最も低迷していたといえる。

BlackBerry 日本アジア太平洋地区営業統括バイスプレジデントのPaul Crighton氏
Crighton氏によれば、BlackBerryは2014年からソフトウェア企業に転身すべく、M&Aを重ねた。2014年にはデータ暗号化・盗聴対策を手掛けるSecusmart、仮想SIM基盤のMovirtu、2015年にはファイル共有のWatchDox、緊急通信サービスのAtHoc、エンタープライズモビリティ管理(EMM)のGood Technologyを買収した。
同氏は、「従来のBlackBerryは端末の外側を保護していたが、2015年に買収した3社のテクノロジを統合し、現在は端末の内部までをEnd to Endで保護するソフトウェア企業に生まれ変わった」と語る。かつてのRIMが強みとした企業内システムから端末に至る通信経路全体を保護する仕組みに加え、端末内に仮想領域を設けることでアプリやコンテンツデータを保護するGood Technologyを組み合わせたことで、これが可能になったという。
現在もBlackBerryブランドの端末は存在するが、ODMで他社から供給を受けているものであり、Crighton氏は同社の事業の中核はスマートフォンやタブレットデバイス、ウェアラブルデバイス、医療機器、スマートカーなどにおけるセキュリティソリューションだと主張する。
「インテリジェントなネットワーク接続される企業のあらゆるエンドポイントの保護にフォーカスしている。これを『Enterprise of Things』(EoT)と呼んでおり、BlackBerryのセキュアなプラットフォームを通じてカバーする」