クラウドコンピューティングへの移行を果たした顧客は、なぜその決断に至ったのだろうか。
企業のアプリケーションをクラウドコンピューティング環境に移行するトレンドがますます強まってきている。英国のロンドンで現地時間10月31日に開催されたAmazon Web Services(AWS)の「AWS Transformation Day」というイベントにおいて、同社の顧客らはクラウドに移行するという決断や、その理由、何が功を奏したか、そして彼らと同様の道を歩もうとしている他の組織に対するアドバイスについて議論した。以下ではその内容を抜粋して紹介する。
スピードの必要性
英国に本社を置く保険会社Avivaの最高デジタル責任者(CDO)Andrew Brem氏は「保守的であるということは、われわれの業界では今まで大きな強みだった」と述べたうえで、「しかし、今後は強みではなくなるだろう」と述べている。Avivaは同社のITポートフォリオの大半をAWSのクラウドへと移行済みだ。
Brem氏は「データはわれわれにとって生命線だ。保険業界で勝者となるには、個人や資産のリスクに対する予測の精度を競合他社よりも高める必要があり、それが長きにわたって実践されてきた科学となっている」と説明している。
一見するとささいなものごと、例えば家につながる私道の長さといったものでも、泥棒の被害に遭うリスクの大小を保険会社が予測するうえで役立つ情報になると同氏は付け加えている。
Brem氏は「こういったデータポイントすべては利用価値があるため、われわれにとってデータは業務そのものとなっている」と述べている。Avivaにとってクラウドコンピューティングサービスは、より迅速な動きを実現するためのイネーブラーになっているという。
「従来は用いられていなかったデータに光を当て、極めて先進的なアナリティクス技術を活用するという戦略を採っているのがわれわれのみでないことは十分に承知しており、システムをいかに迅速に立ち上げられるかが競争上の優位性を確保するうえで重要な鍵となっている」(Brem氏)
実験を容易にする
ファッション小売企業のRiver Islandは同社のポートフォリオの90%をクラウドに移行済みだ。同社の最高情報責任者(CIO)Doug Gardener氏は「われわれは動きの速いファッション業界にいるため、絶え間なく順応していくことに慣れている」と述べている。
Gardener氏によると、テクノロジは今や小売り業界に深く浸透しており、変化のペースは極めて速いという。同氏は「われわれの出発点は従来型のデータセンターや、大型コンピュータ、メインフレーム、データベースだったが、クラウドに向けた移行を速いペースで進めてきている」と述べている。
「これにより、かつては何カ月、あるいは何年もかかっていたことが数分、あるいは数日で完了できるようになっている」(Gardener氏)