海外コメンタリー

クラウド移行に向けたビジネスケース作成--AWSのコンサルタントが語る - (page 2)

Steve Ranger (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2017-11-24 06:30

 Thomas氏によると、ビジネスケースの作成が必要となるのは、クラウドへの全面移行の場合に限られるわけではないという。スタンドアロンのクラウドプロジェクトから手をつけたり、ハイブリッドモデルのテストを実施するといった、さまざまなかたちでクラウドを使用しようとしている企業も、ビジネスケースを作成する価値がある。

インフラという観点から見たビジネスケース

 Thomas氏によると、インフラ面での節約は、費用の節約という観点から見た場合、ビジネスケースの最も大きな部分を占めるはずだという。

 「われわれの経験から述べると、オンプレミスのIT環境で有効利用されているのは45%ほどだ。土地建物の有効利用率が5~15%という低さのなかにあって、この値は極めて高いと言える。しかしこれは、使用されていないにもかかわらず企業が負担している極めて大きな余剰能力だ。企業はピーク時の負荷に基づいて(システムを)購入する(中略)このため、負荷を処理しきれないような状況が発生しないようにするために、余剰能力を購入することになる」(Thomas氏)

 考慮すべきインフラ費用には、データセンターなどの施設費が含まれる場合もあり、これにはリースの残存期間に発生する費用や、違約金なども含まれる。また、クラウドへの移行が不完全な場合に発生し得る費用も考慮しておく必要がある。つまり、一部のアプリがクラウドに移行できなければ、そのためのインフラは削減できない、あるいはデータセンターを閉鎖できないのだ。この場合、そうしたアプリの実行は極めて高価なものとなる。

 その他のファクタとして、回線のリース料金などの接続費用がある。また重要な検討項目として、物理サーバや仮想サーバの数のほか、CPUやコア、RAMといった詳細仕様があるのは明らかだ。SANやNAS、直接接続型のストレージを含むストレージの費用も加味する必要があり、避けられるかもしれないものの将来的に持ち上がる可能性のあるハードウェアの更改計画も考慮する必要がある。

 また減価償却や償却のほか、データセンターの管理費用や、実際のサーバ利用費もこのモデルに追加しておく必要がある。

 Thomas氏は「サーバの利用パターンに着目するのも適切なサイジングを得るうえで重要となる」と述べている。また同氏は、考慮すべき他の点として空調関係やバックアップ関係、コンプライアンス、認証だけでなく、耐用年数経過後の処分費用もあると付け加えている。

アプリケーションという観点から見たビジネスケース

 アプリケーションについては、そのままの状態にしておくという選択肢から、完全に退役させる、そのままの状態でクラウド内に再ホスティングする、一部変更してクラウドに移行する、クラウド向けとしてすべて再構築する、まったく新しいSaaSパッケージを購入するという選択肢に至るまで、さまざまなかたちが考えられる。これらそれぞれによって、費用に対する影響は異なってくる。

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