ECサイト構築ソフトなどを手がけるエスキュービズムが、流通業向けオムニチャネルへとビジネス領域を広げる一方、家電製品や中古自動車の販売を手がける。家電製品を開発、販売するのは、モノ作りノウハウを蓄積し、来るIoT時代に備えたハードとソフトを融合する製品やサービス作りにつなげるためだという。同社の次の一手を探る。
顧客の要望にITを掛け合わせて価値を提供するエスキュービズム
エスキュービズムは2006年5月、社長の藪崎敬祐氏が27歳のとき1人で立ち上げた。翌年、ある企業から請け負ったECサイトをOSS(オープンソース・ソフト)で開発し、それをベースにEC構築ソフトを商品化する。「日本で最初にGPL(ゼネラル・パブリック・ライセンス)による販売を開始し、約5年でナンバー1のシェアを獲得した」(藪崎社長)。スクラッチ開発の半分のコストで、しかも柔軟性があるなどが評価されて、累計500社超の小売りなどの流通業が導入したという。
流通業向けビジネスは広がっている。タブレットを使った店舗POSや、7月にはストリートビューのような店舗を再現したバーチャル空間上で買い物ができるVRを活用したバーチャルコマースを発売する。こうしたリアルとネットの融合などで、EC関連などは年商20億円程度の主力事業に育つ。従業員約150人のうち、約100人がこのEC関連に従事し、自動釣銭機など流通業向けアイデアはつきないようだ。
その一方で、テレビや冷蔵庫などの家電製品の開発、販売に乗り出す。家電市場に参入した理由は2つある。1つは、ニッチな領域があること。国内の家電業界は厳しい状況にあるが、例えば「おひとり様」需要など攻めるべき市場があり、収益も期待できる。どこに、どうように売るのかも経験し、後発で技術的な優位性がなくても、マーケティング力で勝てる領域がある。小型のテレビや冷蔵庫を販売しているのは、そうした理由からで、テレビは月8000台程度売れているという。
もう1つは、モノ作りのノウハウを蓄積すること。IoT活用時代に向けて、今からハードとソフトを融合する技術に取り組んでおくためだ。藪崎社長は「ITはすべての産業に関係する」とし、システム構築の技術とノウハウを高めて、顧客の要望にアイデアとITを掛け合わせて、新しい価値を生み出すことに取り組むという。