株式市場は不可解だ。米証券取引委員会(SEC)は、株価が3カ月間で1万7000%もの急速な値上がりを見せたビットコイン企業The Crypto Companyの取引停止を命じた。その一方で、クラウドに力を入れている大手Linux企業であるRed Hatは、優れた業績を上げ、利益や売上高も市場予想を上回ったが、株価は5%近く下落した。株式市場は、本物の価値とファンタジーでは、ファンタジーを好む傾向がある。
だが、この記事の内容はファンタジーではない。今後数年で、Red Hatはオープンソース企業として初めて四半期の売上高が10億ドルを超える企業になると考えられる。これは大変な数字だ。
詳しく説明しよう。まず、Red Hatの最高経営責任者(CEO)Jim Whitehurst氏は、投資家向け業績発表で「当社は今会計年度終了時点で、総売上高の年間ランレートが約30億ドルになると予想している」と説明した。
正確に言えば、同社は今会計年度の売上高を29億1100万ドルと予想している。オープンソースで金が稼げるなどとは思えないと真顔で言う人もいることを考えれば、悪くない数字だ。Linuxやオープンソースソフトウェアや「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」を購入しても、クビになるようなことはないというわけだ。
Whitehurst氏は声明で、「当社は再び、サブスクリプション売上高と総売上高の両方で前年比20%増を達成した。これは顧客から、当社の中核技術、コンテナプラットフォーム、複数のクラウドやプライベートクラウド環境の管理を可能にするソリューションを含む、ハイブリッドクラウド技術に対する需要が強まっているためだ」と述べている。
Red Hatの最高財務責任者(CFO)Eric Shander氏は、「今四半期の総売上高は7億4800万ドルであり、米ドル建てで前年比22%増、為替変動の影響を除くと20%増となった」と説明した。また今四半期のサブスクリプション売上高は6億5700万ドルで、米ドル建てで前年比21%増、為替変動の影響を除いた場合19%増だったという。Shander氏は、今回も「記録的な四半期」だったと述べている。
Whitehurst氏は業績発表の場で、「これらの業績を達成できた理由は、第1にベアメタルRHEL、仮想化RHEL、およびパブリッククラウドでのRHELを含むインフラ関連製品のサブスクリプション売上高が堅実に伸びていることだ」と述べた。
Whitehurst氏は注目すべきポイントとして、Red Hatの成長は主に「7桁規模の取引の数が増えている」ことによるものだと付け加えている。端的に言えば、RHELはエンタープライズITの必需品になりつつあるということだ。
Red Hatは将来を見据えて、Linuxと同じくらいクラウドにも力を入れている。Whitehurst氏は質疑応答の中で、Red Hatのクラウドインフラからの売上高は前年比で14%増加したと述べている。
「Certified Cloud Service Provider」プログラムの効果もあって、同社のパブリッククラウドとハイブリッドクラウドの市場は拡大している。例えば、中国最大のパブリッククラウドである「Alibaba Cloud」は、従量課金でRHELを提供している。