オーストラリアのシドニーで開催された「OpenStack Summit」では、同社のOpenStackディストリビューションの最新バージョンである「Red Hat OpenStack Platform 12」が発表された。これはRed Hatのプライベートクラウド向け製品だ。
同社は前四半期にも、「Amazon Web Services」のクラウドネイティブサービスを利用するためのサービスブローカー「OpenShift Container Platform 3.7」のリリースを発表している。同社のPaaSクラウド「OpenShift」には、ほかにもさまざまなRed Hatのテクノロジが統合されている。
「Red Hat OpenShift Application Runtimes」(RHOAR)は、コンテナ化されたマイクロサービスを用いたアプリケーション開発のための次世代ランタイムセットだ。「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform(JBoss EAP)」と併用することで、クラウドネイティブで、DevOpsやマイクロサービスと親和性の高いアプリケーションを作ることができる。
Whitehurst氏は、この製品に人気がある理由を2つ挙げている。第1の理由は、有力なクラウドオーケストレーションソフトウェアである「Kubernetes」だ。「Kubernetesプロジェクトに対するコントリビューションが2番目に多い企業であるRed Hatは、ロードマップを推進することができ、この分野で自信を持って顧客をサポートできる立場にある」と同氏は言う。
「もう1つの理由は、単にOSのライフサイクルの問題だ。多くの人は、セキュリティ上の脆弱性の問題を忘れてしまう。OSのユーザー空間は、コンテナの内部にある。この種の抽象化は好まれており、『コンテナがアプリケーションのソースコードだ』と考える人もいる。しかしそれはすべて、ユーザー空間内の依存関係だ。Linuxで修正されているセキュリティ上の脆弱性のうち、90%以上はユーザー空間にある。従って、本番環境のコンテクストにアプリケーションを導入する予定があれば、契約しているベンダーが、コンテナの中のOSコンポーネントのサポートやパッチの適用を確実に行えることをしっかりと確認する必要がある」(Whitehurst氏)
Red Hatの主要顧客のほとんどは、サーバかコンテナかを問わず、Red HatはLinuxを安全な状態に保っていると信頼している。Whitehurst氏は、「実際、当社の顧客のある大手金融サービス機関は別の方法を選択したが、その会社のセキュリティグループは、最終的に他社のコンテナ技術を使うことを拒否した。これは、そのコンテナ技術にOSコンポーネントが入っていたからだった。当社には、そのコンテナ技術に関するライフサイクルもなければ、自信も無く、サポートも用意されていない。このためその企業は考え直し、OpenShiftに移行した」と過去のエピソードを語った。
Whitehurst氏はクラウドサービスの売上高を拡大するための別の方策についても語り、「その方策とは当社の幅広い製品ポートフォリオを組み合わせて販売することで、これによって前年比30%増にあたる100万ドル以上の契約を獲得しており、アプリケーション開発関連やその他の新技術のサブスクリプション売上高も40%以上増えている」と述べている。Red HatのDevOpsツールである「Ansible」などは、RHELとの組み合わせ販売がよく機能している例の1つだ。
ただし、クラウド事業が好調だとは言っても、同社の総売上高の88%を占めるのは、依然としてRHELのサブスクリプションによる売り上げだ。組み合わせ販売は好調だが、Red Hatが望んでいるほどの業績にはなっていない。Red Hatがクラウド分野の中心的な企業になるという目標を達成するには、クラウドサービス事業をもっと早いペースで成長させる必要がある。はたしてこれは可能なのか、それとも今後も収益性の高いLinuxに頼る構造が続くのかは、今後の展開次第だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。