Gartnerが企業の最高情報責任者（CIO）を対象に毎年実施している調査の結果が最近、公表された。今のCIOは、3年前よりもビジネス関連の要素に費やす時間が増えていることが明らかになった。実際、先進企業に所属するCIOは、ほかのCIOと比べて、ビジネスエグゼクティブとしての業務に1月あたり最大4日多く費やしているという。
CIOは、事業部門の役員ともコミュニケーションを取りながら、協力して仕事を進めていく必要があるが、効果的な連携を進め、部門としての要求とビジネス面からの要求のバランスを取るためには、何が重要なのだろうか。この記事では3人のITリーダーに聞いた、CIOのコミュニケーションについてのアドバイスを紹介する。
1．事業部門との関係性を深める
米国の貨物運送会社UPSのCIOを務めるJuan Perez氏は、今日の企業が競争力を保つにはデジタル変革が鍵になるが、言葉が原因で失敗する可能性もあると考えている。システムやサービスがオンデマンドで購入できる時代になっても、テクノロジの導入に複雑な用語やプロセスが伴う点は変わっていない。
Perez氏は、事業部門の役員たちは、技術的な細かい話を聞く辛抱強さを持っていないと警告する。「ITプロフェッショナルは、現代の企業で最も要求が厳しい仕事の1つだ」と同氏は言う。
「仕事をするために技術的な能力は必要だが、同時に会社のために構築するソリューションの複雑さを、メリットとしてビジネスの言葉で説明できなくてはならない。今日のITプロフェッショナル、特にIT部門の責任者には、今まで以上にテクノロジをビジネスと関連付けて説明する能力が必要とされている」（Perez氏）
Perez氏は、今のCIOには優れたコミュニケーションスキルが必要だと述べている。CIOは単にITに関する業務だけを行うのではなく、企業の一員として振る舞えなくてはならない。何より、ITプロフェッショナルは、事業部門の同僚たちが、自分たちは歓迎され、支えられていると感じられるようにする必要がある。
このためPerez氏は、同氏が「事業部門に近いIT部門」と呼ぶ、従業員同士の仕事上の関係を促進し、強めていくことができるIT組織を作ることに力を入れた。
「わたしは幸運にも、UPSの経営委員会の一員だ。わたしは最も重要な経営会議の場に参加でき、上司である最高経営責任者（CEO）からは、企業の合併・買収から戦略立案、マーケティングに至るまで、会社の運営すべてに関わることを求められている。彼はITが役員会議にもたらす価値を認めている」とPerez氏は述べている。
すべてのITリーダーがそのような恵まれた立場にあるわけではないが、Perez氏は経営会議に参加できるCIOはその立場を十分に活かすべきだと述べている。「触媒の役割を果たし、不可能を可能にする能力があることを示すべきだ。企業のテクノロジに対する優先順位が、誰からも見えるようにする必要がある」と同氏は述べている。
2．チームと対話する時間を作る
Perez氏と同じように、英国の消費者金融サービス企業Wongaのグループ最高技術責任者（CTO）Tarah Lourens氏も、ほかの幹部役員との強い結びつきは必要不可欠だと述べている。Lourens氏は、目標を達成できるITリーダーは、ほかの部門にデジタル変革のビジネス上のメリットを理解してもらうことを重視していると強調する。
「わたしの成功体験や、わたしが受け取っているフィードバックを考えるに、経営会議で真剣に話をし、意見を言えることが重要だと思う」と同氏は言う。「ITリーダーは優れたコミュニケーション能力を持ち、テクノロジをビジネスの言葉に翻訳できなくてはならない」
