デジタル体験のエコシステムは、顧客が求めているものを提供するのに役立つ。デジタル体験のエコシステムは、顧客が持つ具体的なニーズや望みを中心に形作られる。Forrester Researchは、顧客体験（CX）のエコシステムを、顧客体験の質に関わる、企業のあらゆる側面（これには企業の顧客、従業員、パートナー、業務環境なども含まれる）の関係性のネットワークであると定義している。デジタル体験のエコシステムは、顧客が成果を生み出すために利用しているデジタル化された製品およびサービスと、企業が顧客に価値を提供するために使用している、CXエコシステムを構成するデジタル化された事業運営の要素の両方からなる。
例えば「Nike+」は、ジョギングをする人が走った距離や消費カロリーを記録するだけでなく、ショップ、ソーシャルメディア、影響力の強い人や積極的なNike+メンバーにフィットネスライフスタイルを提供する招待者限定のセレブ向けジムまでを含む、より大きなエコシステムの一部を構成している。
企業は、自分の会社は顧客に対して独自の役割を果たしていると考えているかもしれないが、顧客の目から見れば、自分たちが望んでいる成果が出て初めて価値が生まれる。そこにたどり着くには、多くの場合、複数の企業の製品やサービスを必要とする。
筆者は自分の車でオートクロスに参加するのだが、この趣味には自動車の運転以外の要素も関わっている。自動車に給油する必要もあるし（その際にはアプリを利用している）、ナビアプリの「Waze」も使用するし（自動車にもナビが内蔵されているのだが）、自動車の動きを記録するアプリや、録画用のアプリも使っている。これらのアプリは、個人的な価値のエコシステムに含まれるが、成果（つまり最高のオートクロス体験）を生み出すために、全体として、より大きなデジタル体験のエコシステムを構成しているとも言える。
デジタル体験のエコシステムは常に進化している。小売店では銀行のサービスを受けられるようになったし、今では航空会社がクルーズバケーションを提供しているし、農業関連企業は農場管理のアドバイスを行っている。
デジタル企業に進化しようとするなら、これまで直接携わってきた事業以外の市場にも目を向ける必要がある。なぜなら、それらの市場をリードしているデジタル企業は、顧客が期待しているものの一部を構成しているだけでなく、近い将来自分の会社とも競合する可能性があるからだ。
