仮想化システム基盤製品を展開する米Datriumは2月14日、日本法人「デイトリウムジャパン」の設立と国内市場への本格参入を発表した。仮想化基盤では難しいというデータのI/O(入出力)高速化とデータ保護の両立に強みがあるという。
Datrium 共同設立者兼最高経営責任者のBrian Biles氏
Datriumは、DataDomain(現Dell EMC)の創設者や最高技術責任者(CTO)グループとVMware出身エンジニアらが2012年に共同で設立した。設立者の1人で最高経営責任者(CEO)を務めるBrian Biles氏は、同社の設立趣意を「仮想化環境に求められる優れたストレージ性能とデータの管理や保護を実現することにある」と説明した。
ITインフラシステム製品では近年、サーバやSSDなどフラッシュドライブを搭載するストレージ、ネットワークのハードウェアと管理ソフトウェアなどが統合されたハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ(HCI)の企業導入が進む。HCIは仮想化などのソフトウェア技術と高密度実装されたハードウェアの組み合わせによって、高いシステム性能や効率性、省スペース性といったメリットを提供する点が注目を集める。
Biles氏は、今後のITインフラ市場では従来のSAN/NASなどのレガシーなストレージシステムからHCIやハイパースケールのSANストレージが主役になると話す。ただ、HCIなどのシステムにおいてI/O性能を高めようとすると、読み書きの際にエラーが起きやすい。一方で正確な読み書きを優先すれば、データ転送などのスピードを抑制せざるを得なくなる。Biles氏は、同社の設立趣意がこの課題の解決だと説明した。
Datriumの製品もHCI分野に含まれるというが、Biles氏は(1)データベースなどが稼働するプライマリストレージでのI/O高速化と拡張性、(2)独立したプライマリおよびセカンダリストレージによるデータの保護、(3)オンプレミスとクラウドによる広範なデータの管理――の3つの特徴から、従来のHCI製品の枠にとらわれるものではないと話す。
Datriumでは、I/Oの高速化を中心とするソフトウェア「DVX Software」を中核に、フラッシュを搭載するサーバハードウェアの「DVX Compute Node」、ストレージハードウェアの「DVX Data Node」、Amazon Web Services(AWS)へのバックアップに対応する「Cloud DVX」などの製品を展開する。
プロダクト担当バイスプレジデントのRex Walters氏によれば、DVX Softwareでは、プライマリやセカンダリのデータを1つのストレージプールとして扱い、これをコンピュートノード側で処理することにより、最大1800万IOPS(最大128ホスト構成、4KBでのランダムな読み込みの場合)を実現するという。同時に、全てのデータをエンドツーエンドで暗号化できるほか、データの重複排除や圧縮なども行える。
製品および機能のカバレッジ。プライマリシステムの高速処理とクラウドまでを含むデータ保護の両面を特徴づける
また分散型のシステム管理によって、例えばノード障害が発生した場合は、キャッシュされたデータを別のノードへ安全かつ瞬時にコピーすることでデータの損失を回避し、ワークロードの継続を実現する。データの保護では、分散型イレージャーコーディングによる耐障害性やクラウドを含めた柔軟性のあるレプリケーションなどの機能を提供するとしている。DVX Softwareは、DVX Compute Nodeのほか、汎用的なx86サーバ上のVMware vSphereやKVM、Dockerの各環境でも動作する。
デイトリウムジャパン代表執行役員社長に就任した河野通明氏
デイトリウムジャパンの登記は1月末に完了したばかりで、代表執行役員社長にはネットアップやデータドメイン、ティントリで社長などの要職を歴任した河野通明氏、技術担当副社長にはデータドメインとティントリで技術担当幹部だった首藤憲治氏が就任した。
両氏は会見で「長年にわたってストレージ製品ビジネスを手掛けているが、Datriumの技術に衝撃を受けた」とコメントした。加えて河野氏は、「HCIといえば企業ユーザーには分かりやすいが、クラウドを含む広範なITインフラをカバーするため、HCIだけにとどまらない点が分かりにくい。今後はその新規性を認知してもらえるかが課題」と話した。
国内市場では、2016年春からIT商社のノックスがDatrium製品を販売している。海外では既に米国政府機関や教育、医療、製造、金融、テクノロジ業界を中心に導入実績が増えているが、国内ではまだ試験導入などのケースが中心。現時点では、I/O性能や導入の容易さ、価格性能比への評価が多いという。
製品の税別参考価格は、DVX Softwareが180万円、DVX Compute Nodeが1950万円(SSD搭載2Uラックタイプ/実行容量14もしくは29テラバイト)から、DVX Data Nodeが186万7500円から、Cloud DVXが90万円(AWSへの遠隔データ保管での5テラバイト当たりの年間利用料)からとなっている。
ストレージハードウェア製品の「DVX Data Node」