「ホワイトカラーの生産性向上がワークスタイル変革の本質だ。残業時間を削減するためには、ITを使いこなさなければならない。社内にエリートチームを作り、ITを使いこなせば早く帰れるという事例を作れ」
3月15日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2018」のセッションの1つとして、ガートナーのリサーチ部門でバイスプレジデントを務める志賀嘉津士氏が登壇。「ワークスタイル変革にCIOとIT部門はいかに取り組むべきか」と題して講演した。
「ワークスタイル変革の最大の目的は、労働時間の短縮だ」と志賀氏は強調する。ワークスタイル変革の先進国である米国では、生活の質を落としたくない理由で1980年代から共働きが増え、ワークスタイルを合理化した。2000年以降は、ワークシェアリングやテレワークを発明した。
労働時間の短縮には、ITの活用が不可欠になる。ITを使いこなすためには、個々の社員のIT熟練度(デジタルデクステリティ:Digital Dexterity)が重要になると志賀氏は言う。
労働時間の短縮では、付加価値を生まない時間を削減することが鉄則となる。例えば、通勤時間は、在宅勤務やビデオ会議で削減できる。移動時間はモバイル端末で削減できる。会議や打ち合わせの調整時間は、会議室管理システムで削減できる。
4K解像度やハイファイ音声、VR(仮想現実)を採用した会議システムがあれば、質の高い議論ができる。AI(人工知能)やストーリーテリングツールがあれば、良質な情報に触れられる。働く意欲を向上させることもできる。
残業代を当てにした生活設計や、残業を前提とした工数管理をやめよ
日本はなぜ残業が多いのか。志賀氏は、欧米との比較表を提示した。日本は集団主義だが、欧米は個人主義だ。業務分担は、日本は曖昧だが、欧米は契約重視だ。日本人は隣の人の仕事を助けるが、欧米では手伝われると自分の存在価値が侵害される。
労働観も大きく異なる。日本人にとって労働は美徳で、働けば働くほど尊敬される。欧米では、労働は神が与えし罰だ。残業していたら無能だと思われる。生活観も異なる。日本人は早く帰宅してもロクなことがないケースが多い。欧米人は夫婦間で家事や育児を分担し、地域のコミュニティも充実している。
工程管理も異なる。日本の企業は残業を前提とした工数設定が常識になっており、本来はあり得ない。日本の労働者も、残業代を当てにして残業代を稼ぐことが生活の一部になっている。一方、欧米はコスト意識が高いので残業はやりにくい。