IBM Think

量子コンピュータ市場を狙うIBM--慶大や日本企業も高い関心

末岡洋子 2018年03月28日 07時30分

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 IBMは3月23日まで米ラスベガスで開催した年次イベント「Think 2018」で、量子コンピュータの実機を披露した。”モノ”を見せるだけではない。同社がクラウド経由で提供する量子コンピューティング「IBM Quantum Experience」を体験した人は、すでに8万人近くに達しているという。


IBM ハイブリッド・クラウド担当シニア・バイス・プレジデント兼IBM ResearchディレクターのArvind Krishna氏

 量子コンピュータは、0と1という現在のコンピュータとは全く異なる新しいコンピュータだ。IBMでハイブリッド・クラウド担当シニア・バイス・プレジデント兼IBM Researchのディレクターを務めるArvind Krishna氏は、量子コンピュータをテーマとした基調講演で、「量子は熱やノイズ、電波障害に弱く、不安定という性質を持ち、単位であるキュー(量子)ビットが上がると指数関数的な成長をする」と説明する。Nキュービットで計算できるのは、2のN乗、つまり50キュービットは2の50乗、200キュービットは2の200乗だ。「200キュービットになると、状態は世界上の既知の粒子の数を上回る」とKrishna氏、とてつもない能力を持つのが量子コンピュータだ。

 詳細は日本アイ・ビー・エムのTHINK Blog Japanを参照されたい。

 日本アイ・ビー・エムの執行役員 研究開発担当 森本典繁氏は、「自然界のほとんどのものが0、1という現在のコンピュータで表現できないものを無理やり表現しているが、量子コンピュータにより自然界の理解や計算が進む。そうなると、確実に世の中のいくつかが変わってくるだろう」とその潜在能力の高さを語った。

 詳細を説明したIBM ResearchのJerry Chow氏(エクルペリメンタル・クオンタム・コンピューティング マネージャー)によると、量子コンピュータの構築は20年ほど前から、さまざまな取り組みが進んできたという。IBMは超電導メタルをシリコンの上に置くなど、シリコン技術のノウハウを活用するとのことだ。


IBM Research Experimental Quantum Computingグループ特別リサーチスタッフのJerry Chow氏

 IBMが企業や学術用途向けにユニバーサルな量子コンピュータを構築していることを発表したのは、2017年のことだ。最初は5キュービットの量子コンピューティングをクラウド経由でアクセスできるようにした。その後、16キュービットのシステムを、そのさらに6カ月後には20キュービットの量子コンピュータを発表した。最新のプロトタイプでキュービット数は50キュービットまで上がっている。

 「量子コンピュータはこれまで学術・研究界のものと思われてきたが、IBM Quantum Experienceとして誰でもアクセスできる」とChow氏はいう。

 それほどの処理能力を何に使うのか? 既存のコンピュータで動かしていたものを量子コンピュータで動かすことはできない。既存のものをどう移植するかより、全く新しいものになるようだ。Krishna氏は、「これまでのコンピューティングでは解決できない分野」と言う。具体的にあげたのは、素材、化学式のシミュレーション、運輸・輸送、財務リスクなどだ。

展示フロアにあったIBMの量子コンピュータ「IBM Q」。中央下の筒の中に、爪の先ほどのチップが入っている(”Q”と書いてある部分の中)。残りは冷やすためのもので、外宇宙よりも低い絶対零度を維持する。これにより量子状態を安定させ、マニピュレートし、さらに読み出すということを行うという。このようにコンピュータとしての形を成しているのは「IBMだけ」と日本アイ・ビー・エムの森本典繁氏
展示フロアにあったIBMの量子コンピュータ「IBM Q」。中央下の筒の中に、爪の先ほどのチップが入っている(”Q”と書いてある部分の中)。残りは冷やすためのもので、外宇宙よりも低い絶対零度を維持する。これにより量子状態を安定させ、マニピュレートし、さらに読み出すということを行うという。このようにコンピュータとしての形を成しているのは「IBMだけ」と日本アイ・ビー・エムの森本典繁氏

これまでのコンピュータは1か0だが、量子コンピュータのキュービットでは1、0、0と1が可能。

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