IBM Think

ムーア、メトカーフ、そして“ワトソンの法則”?--データとAIが企業や社会を変えるとロメッティ氏

末岡洋子 2018年03月23日 07時00分

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 IBMは3月19日から22日まで、米ラスベガスで年次イベント「Think 2018」を開催している。20日の基調講演では、会長兼プレジデント兼最高経営責任者(CEO)のGinni Rometty氏が企業、社会、そしてIBMの転換点について話した。Facebookの個人情報の取り扱いが大きな話題となる中、Rometty氏は何度も「信頼」という言葉を使い、「IBMは顧客のデータを所有しない」と約束した。


Rometty氏

社会に責任を示す--「IBMはデータからマネタイズしない」

 Rometty氏はこの日、転換点を迎えているものに「社会」を挙げたが、コグニティブコンピューティングのWatsonで先行してきた同社が社会的責任を示したと言える。

 具体的には、社会の転換点としてRometty氏は、「素晴らしいチャンス」とともに「課題」として、1)信頼と責任、2)雇用とスキル、そして3)ダイバーシティ(多様化)を一歩進めたインクルージョンの3つを挙げた。

 中でも信頼と責任については、「どのようにデータを活用するかではなく、どのようなデータスチュワード(管理人)で判断される」とRometty氏。IBMの場合は、スチュワードとして以下の3つのポリシーを持つという。

  • 人間、人間とマシンを高めるもの(「人間対マシンではない」)
  • IBMのビジネスモデルは顧客企業のビジネスモデルと衝突しない(「IBMはデータのディストリビューション業ではないし、マネタイズもしない。AIで得られたデータは顧客のもの」)
  • 高度なセキュリティ(「世界のデータのわずか4%しか暗号化されていない。IBMはメインフレームで培った暗号化など、量子コンピュータでも破れないセキュリティをIBM Cloudで実現する」)

 Rometty氏の「あなたのデータはあなたのもの」発言は、Facebookの騒動を受けた新しい発言ではない。Rometty氏は2017年秋にSalesforce.comが開催したイベントでMarc Benioff氏と対談した時にも、IBMはデータからマネタイズしない、データは顧客のもの、と強調していた。

 2点目の雇用については、若者のスキル開発を官民プロジェクトとして展開しているほか、すでに社会に出た経験がある人の再トレーニングも毎年数十万人規模で行なっているという。「生涯を通じて学ぶ時代になった。政府も関係ある」とRometty氏は述べた。

ムーアの法則、メトカーフの法則、そして“ワトソンの法則”?

 では、3つの転換点のうち、残る2つ(企業、IBM自身)についてはどうか。

 企業の転換点については、「攻撃に転じよ」というのがRometty氏のメッセージだ。数十年と関係を構築している企業も少なくなく、IBMには”既存”企業と言われる顧客が多い中、「崩壊する既存企業になろう」と呼びかける。

 背景にあるのは、Rometty氏がいうところの”Watsonの法則”だ。半導体のムーアの法則(半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる)、通信ネットワークのメトカーフの法則(通信網の価値は利用者数の2乗に比例する)、と25年おきに大きな転換点が訪れ、ビジネスと社会を変えた、とRometty氏。現在われわれは新しい転換点にさしかかっているという。

 新しい転換点を引き起こしているのは、データと学習(分析)だ。「全てのデータを取り出してAIを加える。すると急激な学習が可能になる」とRometty氏、最終的な競争優位性は少しでも早く学習できるかどうかにかかっているという。

 Rometty氏によると、世界のデータのうち検索可能なものは20%。残る80%は企業が蓄えている。このデータを活用して転換を果たすことができれば、既存企業が新規参入に崩壊されることなく、崩壊者になれるという。

 攻めのために企業がすべきこととして、1)複数のデジタルプラットフォームを活用する、2)全てのプロセスに学習を組み込む、3)あらゆる形でエンパワーする、とRometty氏。

 1)のプラットフォームについては、Workday、Salesforceなどさまざまなプラットフォームを使い、自社でもプラットフォームを構築する。2)では、IBM自身の体験として、人事(HR)からAIを導入したという。自社サイトを訪問する求職者のデータを合意に基づいて収集しWatsonで分析、訪問者が実際に応募する比率は平均の3倍になったという。HRの他に、導入しやすい業務として顧客サービス、リスクと規制遵守なども挙げた。

 3)は、繰り返しの顧客サービスの仕事にAIを導入することで1日に応対するメールの数を60%削減できたという金融顧客の例を披露、通常ならAI導入に反対が多い労組までも導入を支持したという。

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