米サンフランシスコで開催された「AWS Summit」では、新しいサービスがいくつか発表されたほか、「re:Invent」で紹介されたいくつかの新サービスの一般提供が開始された。しかし今回のカンファレンスで見えたテーマは、AWSが企業のデジタルイノベーション戦略を加速させる能力の強化だった。
このテーマの核は、AWSが創業以来掲げてきたものと同じだが、今回のカンファレンスで変わったのは、従業員に新しいスキルを獲得させなくても、新たなイノベーションが可能になるサービスを幅広くそろえたこと、そして、それらのイノベーションを推進するためにスタッフを再編する際に、最高情報責任者(CIO)が直面する課題と向き合ったことだ。
これらの新たな側面は、同社の最高技術責任者(CTO)Werner Vogels氏が行った基調講演にも明確に現れていた。同氏の講演では、新しいアルゴリズムの構築やトレーニングが不要で、データのデプロイメントや規模の拡大への対応、管理などの心配もなしに、データから知見を引き出せる一連のAIサービスが紹介された(これらのサービスの中には、新たに発表されたものや、今回一般提供が開始されたものもあった)。また、AWSの深層学習(DL)および人工知能(AI)担当ゼネラルマネージャーMatt Wood氏は、同社がre:Inventで発表したいくつかのトレーニング済みモデルを利用することで、場所、名前、言語などの要素に関して、データセットを自動的に分析できることを示した。これらのうち「Transcribe」と「Translate」(英語からスペイン語)の2つは、すでに一般提供が始まっている。これらのツールをAWSのBIツールである「QuickSight」と組み合わせれば、社内に機械学習に関するスキルがほとんどなくても、リッチなデータ分析が可能になるという。同社の機械学習サービスは、AWS上に保存されているデータや、「Direct Connect」のリンクを介してアクセス可能なデータを取り込み可能であり、同社のAIコアプラットフォーム「SageMaker」は、「TensorFlow」や「MXNet」を使ったオープンソースツールに対応している。
AWSの「ML Solutions Lab」を利用すれば、社内に十分なスキルがなくてもこれらのサービスを利用できる。ML Solutions Labは、必要に応じて利用できるデータサイエンティストのチームだ。また、データセットのスケーリングの問題には、re:Inventで発表された「Aurora Multi-Master」や「Aurora Serverless」、「S3 Select」や「Glacier Select」で対応できるという。