顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得

第1回:マーケティングオートメーション(MA)の基本を知る

草皆直人 (24-7)

2018-05-25 07:00

 マーケティングオートメーション(Marketing Automation:MA)ツールとは、自社ウェブサイト(オウンドメディア)から見込み客情報(リード)の獲得、獲得したリードの分類、リードに対する接触から商談化までの流れを支援するツール群の総称です。

 日本では2013年ごろから注目され始め、「Marketo」や「HubSpot」に代表される海外製MAツールの導入が始まったタイミングです。当時は最新のマーケティングテクノロジに敏感なマーケターや経営者、特に大手企業を中心に導入が進みました。しかし、その傾向にも変化が生じており、近年は中小企業の関心が高まっています。その背景には以下のような要因が考えられます。

  • 海外MAツールの日本語化が進んだ
  • 手の届きやすい安価なプランが増えた
  • 国産のMAツールが増えて認知が広がった

 また、これまでは中小企業の多くの方から「MAツールは高価で大手企業が導入するもの」「知見のあるスタッフがいないので、うまく使いこなせないのでは?」といった反応が多く聞かれましたが、最近は「自社のリード獲得から、獲得したリードの活用方法を見直す必要性を強く感じている」「そもそもリード管理をしっかりしたい」といった問い合わせに変化しており、その解決策の一つとしてMAツールを提案する機会が増えています。

 このような背景を踏まえ、本連載ではMAツール導入のポイントや、フェーズごとにやるべきことについて詳しく解説していきます。本連載を一通り読むことで、MAツールは自社のマーケティング活動をサポートし、関連する業務をより効率的・効果的にする道具であることが分かるでしょう。また、MAツール導入後の施策を知っておくことで、“導入して終わり”ではない、本当の意味でのMAツールの活用が可能になります。

MAツールは幻滅期?データから見える国内市場の現在

 まずはMAツールの市場について見ておきましょう。

出所元:矢野経済研究所「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーケティングオートメーション)市場に関する調査(2017年)」(2017年11月29日発表)
出所元:矢野経済研究所「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーケティングオートメーション)市場に関する調査(2017年)」(2017年11月29日発表)

 矢野経済研究所の2017年11月時点の発表によれば、2017年のMAサービス市場は約301億円の見込み、2018年は約365億円の予測となり、今後も103~121%で推移していく見通しとなっています。

 次に、「ハイプサイクル」(ガートナーが用いる特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図)に当てはめて、MAツールを見ていきます。

ガートナーのハイプサイクル
ガートナーのハイプサイクル
  • 黎明期:新しいテクノロジが登場したばかりのタイミング。関心・注目度が高い
  • 過度な期待のピーク期:テクノロジの導入が進むが、期待が過度に高まる段階
  • 幻滅期:過度な期待がはずれ、テクノロジに幻滅し、関心が失われていく段階
  • 啓蒙活動期:過度な期待ではなく、啓蒙により技術が実情に合った形で理解され、徐々に根付いていく段階
  • 生産性の安定期:テクノロジが認知され、一般的に受け入れられるようになり安定して利用される。さらにテクノロジが進化して発展していく段階

 MarketoやHubSpotなどのMAツールが日本市場に登場してからの約2~3年で、黎明期から過度な期待のピーク期を迎えたと考えられます。メディアでの露出が増え、一部ではまるで魔法の杖のように扱われ、導入すればリードがどんどん増える、商談が増える、売り上げが伸びる、などの「過度な期待」を抱いた方も多かったように感じます。一部企業においては、最適な戦略がないままMAツールを導入してしまい、運用もメール配信一辺倒になってしまっているといった実態も多く聞かれました。

 一方で、正しい知識と活用方法が理解され、成功事例が出てくれば、テクノロジは啓蒙活動期に向かい、市場に根付いていきます。本連載も、まさに期待が膨らみ過ぎて弾けてしまったかもしれない、MAツールの正しい実力と活用について啓発することを目指しています。

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