成長するインシュアテック市場
われわれの生活の中で、保険は知らず知らずの中で身近な存在になっている。生命保険や医療保険はもちろん、住居に関する保険では家財保険、火災保険、地震保険。そしてクレジットカードに旅行保険が付帯しているケースも多く、それに気づいていない方も多くみられる。さらには自動車保険、ゴルフ保険などわれわれはさまざまな保険に加入し、日常生活のリスクヘッジとして運用されている。
今年に入ってから「インシュアテック」あるいは「インステック」という言葉をよく耳にするようになった。インシュアテックとは、Insurance(保険)とTechnology(テクノロジ)を組み合わせた造語であり、InsTech(インステック)とも呼ばれている。2017年流行したキーワードであるFinTechの保険版と位置づけるのが1つの流れとなっている。
インシュアテックを簡単に説明すると「保険契約者(や保険金受取人)や保険事業者を取り巻くさまざまな手続きや管理を人工知能(AI)、IoT、ビッグデータやブロックチェーンなどの先端情報技術を利用することで効率化・合理化し便利にする」アプローチである。
矢野経済研究所によれば、2018年度の日本のインシュアテック市場予測は565億円、2019年度は800億円と急成長の推移が予測されている。一方米国のFinancial Technology Partnersによるとグローバルでの2017年のInsurTechスタートアップへの投資額は約2420億円に上り、2018年の第1四半期での約990億円と積極的なベンチャー投資が行われている。
保険業務のプロセスからのメリット
それでは具体的にインシュアテックとはどのようなものなのか。あるいはインシュアテックでなにが便利になるのか。
保険事業者と保険加入者との間の業務プロセスを分類すると「募集(保険申込み)→新契約(契約作業)→契約保全(住所変更など)→収納管理(保険料受領)→保険金支払」という流れになる。インシュアテックはこれらのプロセスにおいてAI、ビッグデータ、IoT、ブロックチェーンなどの最新のテクノロジと組み合わされ、保険加入者に対して大きなメリットを提供する。
1.募集プロセス(保険申込み)
・ 保険の選定や申込み時、ビッグデータ ✕ AIによりもっとも自身にメリットのある保険消費を提案してもらう。従来の保険より保険料が安くなる。
・ チャットボットやビッグデータをベースしたリスク解析により、安価なオンデマンド型の保険が設定できる。
2.新契約プロセス(契約作業)
・ 契約時に必要な様々な情報をITがサポートし、より簡単に契約手続きができる。保険の加入の審査が簡単になる。
・ IoT ✕ AIによりをもとにウェアラブルデバイスで健康指標を測定し健康状態により保険料金を柔軟に設定できる。
3.契約保全プロセス(住所変更など)
・ 自身の加入している複数の保険に対してプロフィール情報の変更や住所変更が一括で処理できる。
4.収納管理プロセス(保険料受領)
・ Apple PayやGoogle Payなどスマホ決済による保険料の支払いが可能になる。
5.保険金支払プロセス
・ AIにより審査プロセスが合理化され保険の請求手続きが簡単になる。
このようにインシュアテックは保険加入者に大きなメリットを提供するが、実はこれらのメリットは保険事業者側にも提供され「人件費の削減」や「設備投資の削減」などに貢献する。また、保険事業者に対してはAIやIoTなどをにより、再保険プロセスや保険商品開発などでも大きなメリットを発揮するであろう。