本連載では、ビジネスで利用するITサービスの最新動向について、最前線を走る企業への取材を軸に紹介する。複数回で同じテーマを追いかけて、今後注目すべきテクノロジやサービスを取り上げる予定だ。今回は「ローコード/ノーコードプラットフォーム」をテーマにした第5回目で、スマートフォンアプリ(スマホアプリ)の開発運用基盤「yappli(ヤプリ)」を紹介する。
CMSのような管理画面でiOS/Androidアプリを開発できる
ウェブの時代は終わると感じてアプリ開発基盤に挑戦
ヤプリは、iOSとAndroid向けのアプリケーションをノーコードで開発できるサービスを提供している。複数のプラットフォームに対応したアプリを開発するには、専門的な技術や知識が必要となり、ITエンジニアを抱える一部の大手企業しか、なかなか手を出せないのが現状だ。同社の提供するyappliは、中小企業などでも簡単に自社アプリを制作できるプラットフォームだ。
今回は、同社ツールとローコード/ノーコードプラットフォームについて、共同創業者で代表取締役の庵原保文氏に話を聞いた。
yappliのウェブサイト
ヤプリは2013年4月に創業した。米AppleのApp Storeが広まり始めた2010年前後、庵原氏は後に一緒に創業する最高技術責任者(CTO)の佐野将史氏とアプリを作って遊んでいたという。その時の体験が、当時全盛だったウェブとは全く異なり、未来を感じたそうだ。
ヤプリの共同創業者で代表取締役の庵原保文氏
「スノーボードのハウツーアプリを作りました。(端末を)縦にするとテキストが表示され、横にすると動画が流れるというものです。カメラやセンサと連携することで、より直感的に操作できる時代になると思いました。その時にウェブの時代は終わると感じたのが原体験です」(庵原氏)
その後、庵原氏は友人からアプリを作ってほしいと依頼を受ける。同じタイミングで二人から相談されたのだが、カタログ系の似たような要件だったそう。それを個別にスクラッチで作るのは無駄だと感じた庵原氏は、コンテンツ管理システム(CMS)のような管理画面からアプリを同時に作れたら、ものすごく楽なのではないかと考えた。面倒な受諾開発という課題の解決になると思い立ち、アプリ開発のプラットフォームを作ろうと決意した。
「yappliの開発をスタートしたのは2011年です。そこから創業までの2年間はずっと開発ばかりしていました。デザイナーとエンジニアと私の3人で創業したのですが、プログラムを書けなかった私はビジネス面を担当しました。創業から2年間はやはり苦しみましたね。今思えば、やや時代を先取りし過ぎたのかなと思いました」(庵原氏)
そんな中、3年目に顧客対象を中小企業から大手企業へと切り替えた。さらに、2015年4月に開催されたスタートアップイベント「SLUSH ASIA」のピッチコンテストで準優勝を果たした。この辺りから良い流れになってきたという。その結果、現在はアパレルやスポーツブランドなど、250社ほどが同社サービスを利用しているという。