自律型クラウドがもたらすIT部門の「働き方変革」--オラクルGVPのアガルワル氏

國谷武史 (編集部) 2018年08月01日 07時00分

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 Oracleは、2017年の「OpenWorld」カンファレンスで“世界初”をうたう自律型データベースを発表して以降、「自律型」をクラウドのキーメッセージに置いている。競合する企業向けクラウドサービスの多くが人工知能(AI)や機械学習といった新たなテクノロジを前面に打ち出す中で、同社のスタンスはやや異色に映る。その狙いを製品戦略およびプロダクトマネジメントを担当するグループ・バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal氏に聞いた。

Oracle 製品戦略およびプロダクトマネジメント担当グループ・バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal氏
Oracle 製品戦略およびプロダクトマネジメント担当グループ・バイスプレジデントのSiddhartha Agarwal氏

 Agarwal氏は、企業向けクラウドでユーザーが直面する課題に、運用コストの増大やセキュリティ対応の煩雑さ、AI・機械学習の専門家不足を挙げる。世界中の多くの企業がAIなどのテクノロジを活用したビジネスのデジタル変革を志向する一方、その原動力となるはずの足下のIT環境は、日々の運用管理から生じる諸問題が山積したままだ。同社が「自律型」を打ち出す背景には、そのような状況をまず変える必要性があるのだという。

 IT環境の運用を改善する文脈では、「自律型」と似た「自動化」を打ち出すベンダーも多い。Agarwal氏は、「自律型」と「自動化」の違いを次のように説明する。

 「ソフトウェアの脆弱性を修正するパッチの適用作業で言うと、現在の『自動化』はベンダーがパッチをリリースしたという情報をユーザーに知らせてくれるだけで、適用の可否や作業のタイミングはユーザーが意思決定しないといけない。『自律型』はそれらも含めてベンダーが行う。ユーザー企業のシステム管理者やデータベース管理者は日々のこうした煩雑な作業から解放され、経営側や事業部側から求められる役割に集中できる」

 同氏の見解では、多くのクラウドサービスがユーザーに訴求する「自動化」の現実的な効用はまだ限定的であり、ユーザー企業がビジネスのデジタル変革という本来の目的に臨める環境には、なり得ていない。同社は「自律型」のビジョンを打ち出すことで競合との差別化を図り、実需を獲得していくという戦略を描いているようだ。

「自動化」と「自律型」の展開
「自動化」と「自律型」の展開

 AIや機械学習などのテクノロジに関する文脈も、同社と競合ではやや異なる。多くは“民主化”という言葉も用いて、新たなテクノロジをさまざまな立場のユーザーが身近に利用できるメリットを打ち出すが、Agarwal氏によれば、Oracleの場合はそれも含めてAIや機械学習を、「自律型」を実現する要素技術としてクラウドの各種サービスに組み込んでいる点が異なると説明する。

 例えば、データウェアハウスに格納したビッグデータの分析によって経営や事業の判断に資する洞察を素早く得るというワークロードの場合、従来ならシステムの設計や調達、構築、データベースの設計や構築、チューニングに始まり、分析モデルの開発とチューニングを繰り返し、フィードバックを得ながらエンドユーザーの求める水準のサービスにしていく。そこではサービスが非常に安定的であり、かつ高い性能を追求することが要求され、IT部門はその達成のために上述のような作業に従事している。

 Agarwal氏が示す自律型の場合は、データウェアハウスやデータベースの利用状況や性能状態、分析モデルに対する評価といったあらゆるビッグデータをAIが分析し、求められる水準のサービスへ自動的に最適化する。パッチ適用などの運用作業もシステム側が行う。エンドユーザーがワークロードに求めるのは、単に「クエリを投げたらすぐに答えを出してくれる」という点であり、その実現に必要とされるあまりに膨大な周辺作業へIT部門のリソースを投じることは、もはやナンセンスという感覚に近いようだ。

東京都港区が7月27日、Oracleのクラウドサービスを利用した外国人向けのAIチャットボットサービスを発表した。記者発表会で武井雅昭区長は、AI利用や多言語対応への容易性と併せてセキュリティレベルの高さを採用理由に挙げている
東京都港区が7月27日、Oracleのクラウドサービスを利用した外国人向けのAIチャットボットサービスを発表した。記者発表会で武井雅昭区長は、AI利用や多言語対応への容易性と併せてセキュリティレベルの高さを採用理由に挙げている

 企業にとってクラウドが身近な存在になる中で、現在は新しいテクノロジを次から次に打ち出し、それらをいかに利用できるかがベンダー訴求の争点となっている。Agarwal氏も、同社のクラウドでは自律型データベース以外にも、高性能なITインフラサービスの提供環境やブロックチェーンなどへの対応といった取り組みを強調し、クラウドで容易にチャットボットを開発し、チャットボットで得た消費者の声から相手の心理を把握するというクラウドの利用例を挙げている。このこと自体は目新しいわけではないものの、同氏は説明の際に、開発環境や分析技術といった個々の要素でOracleのクラウドがいかに他社よりも優れているかをアピールせず、セキュリティレベルの高さなど、エンタープライズ向けクラウドとしての総合力の強みを訴求した。

 Oracleが「自律型」のビジョンを打ち出してしばらくは、「具体的に何が良くなるのか」「管理者の仕事の負担が本当に楽になるのか」といった懐疑的な見方が目立った。しかしAgarwal氏は、「既に多くの顧客がこのビジョンを支持しているし、マーケット調査で『自律型ソフトウェア』というカテゴリも誕生している」と、こうした見方を一蹴する。

人材採用での応募者選定から業務に従事するまでのプロセスをクラウドのデジタルアシスタントが支援するというシナリオ。企業にとってクラウドはこうした利用シーンで考えるべきものという
人材採用での応募者選定から業務に従事するまでのプロセスをクラウドのデジタルアシスタントが支援するというシナリオ。企業にとってクラウドはこうした利用シーンで考えるべきものという

 「IaaSやPaaSといったレイヤでユーザーがテクノロジの検討に終始するといったことより、SaaSよりも上のステージで、経営層や事業部、IT部門が一丸になり、自社が成すべきことを考え、実行していくべきことに注力すべきだろう」とも語る。「自律型」は、企業の“したいこと”にテクノロジを活用するという点で、ともすれば“活用”の足かせとなりがちな非効率なIT運用の課題を改善していく道筋であり、「Oracleがそのプラットフォームを提供する」というのが同氏の主張であるようだ。

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