アナリティクスの米SAS Instituteが、人工知能(AI)時代に向けたプラットフォーム「SAS Viya」でリードを図っている。SAS言語に加えて、Pythonにも対応するオープンなもので、42年間アナリティクスで培ったノウハウや経験を詰め込んだ。最高執行責任者(COO)としてSASを率いるOliver Schabenberger氏に、SASのAIや同社が提唱する「アナリティクス経済」について話を聞いた。
--1976年、当時まだ珍しいアナリティクス技術ベンダーとして創業した。42年間のこの分野の変化をどう見ているか?
SAS Institute 最高執行責任者(COO)のOliver Schabenberger氏
アナリティクスに使われるテクニックとして、画像処理など新しい技術が出てきた。テクニックに加え、スケールも重要な変化だ。10年ほど前まで個々の作業で使ってスケールさせていたが、数年前より、どうやって最初からスケールのある形で正しいアナリティクステクニックを用いて問題を解決するのかにフォーカスがシフトしている。
特にここ最近、このトレンドが顕著になっている。機械学習は良い例で、コンピューティングの能力、ストレージやデータのキャプチャが可能になったことを受けて、利用が広がっている。データを見て、ターゲットにする成果を想定しながらたくさんのアルゴリズムを動かす。ターゲットにする成果があり、最適なアプローチを選ぶことができる。一方、AIではこれらのテクニックに多くのデータをフィードし、利用できるデータにより、意思決定が明白になる。つまり、成果に至るまで、似ているようで全く異なる2つの方法がある。われわれのAIプラットフォーム「SAS Viya」ではさまざまなアプローチを用いることができる。
SASがこのところ大きな投資をしているのは、ストリーミングだ。高速ストリーミング処理の「SAS Event Streaming」は、アナリティクス主導のストリーミング処理が可能で、SASのIoT(モノのインターネット)の土台となっている。IoTのビジネス上の価値は、ネットワークのインテリジェンスによって初めて実現される。中央にある意思決定エンジンも重要だが、エッジにも意思決定が分散されつつあリ、エッジの処理能力が重要になっている。全てが中央にある意思決定エンジンに集約される必要はない。
例えば、GE TransportationはSASのSAS Event Stream Processingを実装して列車の行動追跡をしており、列車が搭載するエッジデバイスで運行に関する意思決定を行っている。
--「アナリティクス経済」を提唱しているが。
アナリティクス経済とは、デジタル化とバーチャル化によって生まれる経済だ。データ主導で、ソフトウェアにより運用される。データと接続性の重要性がさらに高まり、データは経済の“燃料”になる。だが“エンジン”、つまり経済のパワーはアナリティクスとアルゴリズムにある。データから引き出した価値だ。燃料を作ったら、アナリティクスを適用して洞察を得る必要がある。
--アナリティクス経済におけるSASの役割は?
42年間、SASは企業がアナリティクスから価値を得るのを支援してきた。アナリティクス経済はSASが強みを発揮できる土壌だ。データが情報になり、企業のビジネスを加速する。データがあるところに分析の必要性が生まれる。アナリティクスなしには、データの価値は実現されない。
--「SAS Viya」の差別化は?
SAS Viyaを利用してユーザーは、1つのプラットフォーム上でアナリティクスのライフサイクルを回すことができる。しかもスキルレベルを問わない。アナリティクスの知識やアナリティクスオペレーションのスキルがある社員がいないという企業でも利用できる。
データの採集、準備、探索、可視化、モデリング、機械学習、アナリティクスアセットのキャプチャ、実装、性能モニタリング、管理と、エンドツーエンドでアナリティクスのライフサイクルを、視覚的なインターフェースを使ってプログラミングなしに利用できる。クラウドとして拡張性のある形で提供し、オープンなので統合も可能だ。
IT、開発部隊、パートナーはエンドツーエンドの機能を構築できる。これはオープンソースでは簡単ではない。オープンソースを使う場合は、自分で最適なパーツを探して組み合わせる必要がある。Pythonを使う開発者は多いが、ViyaではJupyter/Pythonノートブックを利用できる。SASはオープンソースの重要性を理解しており、Viyaはオープンなプラットフォームだ。同時に、SASのプラットフォームの機能はどこよりも高度かつ広範だ。