松岡功の「今週の明言」

米IBMのCEOが語る「企業革新の3大条件」

松岡功

2018-11-16 10:42

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、米IBMのGinni Rometty 会長・社長兼CEOと、NECの上坂利文サービスプラットフォーム事業部長の発言を紹介する。

「データ活用、専門性、信頼が企業革新の3大条件」
(米IBM Ginni Rometty 会長・社長兼CEO)

 日本IBMが先頃、都内ホテルで開いた経営者向けイベント「Think Leadership」で、来日した米IBMのGinni Rometty 最高経営責任者(CEO)が講演を行った。冒頭の発言はその講演で、企業革新について語ったものである。

米IBMのGinni Rometty会長・社長兼CEO
米IBMのGinni Rometty会長・社長兼CEO
Think Leadershipであいさつする日本IBMのElly Keinan代表取締役社長
Think Leadershipであいさつする日本IBMのElly Keinan代表取締役社長

 日本IBMのElly Keinan社長に紹介されて登壇したRometty氏はあでやかなグリーンのドレスに身を包み、ダークスーツの年配男性が聴講者の大半を占める会場に向けて異彩を放っているように見えた。

 「今、それぞれの産業分野で既存の企業が革新的なディスラプター(破壊者)に脅かされていると言われるが、私たちはテクノロジによって既存企業も革新的な企業になれるようにお手伝いしたい」

 Rometty氏はこう語って、企業を革新するための条件として「データ活用」「専門性」「信頼」の3つを挙げ、それぞれの根拠を次のように説明した。

 1つ目のデータ活用は、「データが革新、そして成長の原動力になる」と言い、「実はネット上で検索できるデータは全体の2割で、あとの8割は企業や政府が保持している。これからはこの8割のデータをどう生かしていくかが、既存の企業を革新していく鍵になる」と指摘した。

 2つ目の専門性については、企業のコアコンピタンスは商品やサービスにあるのではなく、その企業が何を専門としているかにあるという。例えば、保険会社は保険商品でなく、実はリスク管理が専門といった捉え方だ。その上で同氏は、「IBMはそうしたお客さまの専門とするところをテクノロジで支援したい」と語った。さらに、この専門性こそが「デジタル時代に求められているエクスペリエンスを生み出す」との見解を示した。

 そして3つ目の信頼については、「例えば、今、データの取り扱いにおいて一部企業の誤った行為が消費者の信頼を大きく揺るがせている。消費者の信頼は時間をかけて獲得するものだが、誤った行為で失うのは早い。信頼にはセキュリティやプライバシーも含まれる。この信頼は革新的な企業になるための絶対条件だ」と説明した。

 Rometty氏のこの話を聞いて筆者が興味深く感じたのは、専門性を挙げていることだ。3大条件の説明の中でも特に力を入れて訴えているように見えた。筆者なりに解釈すると、同氏は「あなたの会社は何をもって世の中の役に立っているのか、をしっかり認識してほしい」と訴え、それが企業革新の柱になるということではないか。同氏の深い洞察を感じた話だった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]