本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMの纐纈昌嗣 執行役員と、Box Japanの三原茂 執行役員の発言を紹介する。
「IBMのセキュリティ事業はソリューションもプラットフォームも提供する」
(日本IBM 纐纈昌嗣 執行役員)
日本IBMの纐纈昌嗣 執行役員
日本IBMが先頃、セキュリティ事業の戦略について記者説明会を開いた。同社執行役員でセキュリティー事業本部長を務める纐纈氏の冒頭の発言は、その会見の質疑応答で、事業内容について聞いた筆者の質問に答えたものである。
まずは、纐纈氏が会見の冒頭で述べた同社のセキュリティ事業の今後の方針を紹介しておこう。それは「Securing the Journey to Cloud」である。この方針について、同氏は次のように説明した。
「今、多くのお客さまが自社のシステムをオンプレミスからクラウド環境へ移行しようとしているが、クラウドのセキュリティに不安があるとの声が相変わらず少なくない。クラウドのセキュリティに対する懸念はだいぶ薄らいできているが、ここにきてハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドのニーズが高まってきた中で、改めてセキュリティへの不安が高まってきていると実感している。そこで、われわれとしては“クラウドへの移行においてセキュリティの不安を払拭する”ことを事業方針の柱に据えることにした」
「Securing the Journey to Cloud」には、そうした思いが込められている。この方針に基づいて、同社ではトータルセキュリティに対応した製品・サービスおよびコンサルティングによるソリューションを提供している。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは同氏の冒頭の発言に注目したい。
今回の会見では事業方針とともに、図1に示したソリューション群の説明が中心だったが、一方でIBMはパートナーエコシステムを生かしたセキュリティプラットフォームの展開にも力を入れている。米IBMが2018年10月に発表した「IBM Security Connect」は、その決定版とも目されている。日本でも2019年後半に提供が始まる予定なので、今回の会見でもこれについて何らかの発表があるかと思っていたが、結局、言及はなかった。
(図1)IBMのセキュリティソリューションの全体像
そこで筆者は会見の質疑応答で、「IBMのセキュリティ事業は、ソリューションとプラットフォームのどちらが主力なのか」と聞いてみた。筆者は、今後IBM Security Connectが主力になるとの印象を抱いていたからだ。この質問に対し、纐纈氏は次のように答えた。
「どちらも力を入れていく。実際、事業内の売り上げでも半々となっている。プラットフォームではこれからSecurity Connectが出てくる一方、コンサルティングを含めたソリューションも引き続き拡充していく。どちらもダイナミックに展開していくことこそが、IBMの最大の差別化ポイントだと自負している」
冒頭の発言は、このコメントのエッセンスである。今回はソリューションの説明だったが、これから出てくるハイブリッドクラウドおよびマルチクラウドに対応したセキュリティプラットフォームは、日本でどのように展開されるのか。注目しておきたい。