本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NIコンサルティングの長尾一洋 代表取締役と、SAPジャパンの森川衡 バイスプレジデントの発言を紹介する。
「独自のシステムとコンサルティングによって中小企業の経営を支援したい」
(NIコンサルティング 長尾一洋 代表取締役)
NIコンサルティングの長尾一洋 代表取締役
NIコンサルティングが先頃、中小企業のグループ間連携を容易にする機能を備えたグループウェア「NI Collabo 360」を開発し、10月1日に提供を開始すると発表した。長尾氏の冒頭の発言はその発表会見で、同社の事業形態について述べたものである。
NI Collabo 360の内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは同社の事業形態に注目したい。
まず、長尾氏の冒頭の発言にある「独自のシステム」というのは、図に示したような同社のソフトウェア群からなる「可視化経営システム(VMS:Visibility Management System)」のことである。このソフトウェア群は「NI経営」と呼ぶ経営コンセプトを実現するために必要なものだという。
可視化経営システム(VMS)を構成するソフトウェア群(出典:NIコンサルティングの資料)
では、NI経営とは何か。同氏によると、「雇用者と被雇用者の対立関係を超えたパートナーシップに基づく企業経営を言い、個の確立(Personal Identity)とコアコンピタンスの確立(Corporate Identity)を基盤にネットワークを形成し、そのネットワーク全体をアイデンティファイする(Network Identity)ことで、“個を活かし、全体を生かす”ポスト資本主義社会の経営コンセプト」とのことだ。
また、このNI経営の実現には、「求心力のある理念と目的、それぞれのコミュニケーションを密にするIT、さらにネットワークを構成するメンバー(パートナー)の意識と能力を高める教育システムが必要になる」としている。
NIコンサルティングは中堅中小企業を中心とした経営コンサルティング会社である。長尾氏によると、可視化経営システムのソフトウェア群を活用するためのコンサルティングを合わせて提供することで、経営の可視化、営業力強化、生産性向上をローコストで支援する“業績アップ実現”をモットーとしている。可視化経営システムはこれまで累計で6000社超の導入実績がある。
ユニークなのは、コンサルティング形態だ。全国の主要都市8カ所に経営コンサルタントが常駐して顧客企業の可視化経営システムの稼働状況をモニタリングし、何か問題を検知すれば必要に応じて現場に駆けつけるというものだ。同社ではこれを「リモート・コンサルティング・センサー(RCS)」と呼んでいる。こうした形でコンサルティング工数を減らすことでコストダウンを図っている。
現在、経営コンサルタントは長尾氏を含めておよそ40人。RCSによって1人が100社以上を担当している格好だ。この陣容を拡充したいのでは、と会見の質疑応答で聞いたところ、「むやみに人数を増やすより品質を重視しており、少数精鋭でもやれるようにウェブ会議などのツールを有効活用していきたい」とのこと。ユニークなビジネスモデルの浸透ぶりを今後も注目しておきたい。