5年前(2014年)にIBMのx86サーバー事業を買収してエンタープライズ事業に本格的に乗り出したLenovo。今、同事業はどんな状況で、どのような戦略を展開しているのか。同社データセンターグループのアジア太平洋地域担当プレジデントを務めるSumir Bhatia氏に取材する機会を得たので聞いた。
「インテリジェントトランスフォーメーション(IX)」に込めた思い
「私たちは今、デジタルトランスフォーメーション(DX)を超えた“インテリジェントトランスフォーメーション(IX)”をお客さまに提案している」――こう語るのは、Lenovoデータセンターグループ(DCG)のアジア太平洋地域担当プレジデントを務めるSumir Bhatia(スミア・バティア)氏だ。IXとは何か。IXを実現するためにはどうすればよいのか。今回のBhatia氏の取材では、この点をメインテーマとして聞いてみた(写真1)。

写真1:Lenovoデータセンターグループのアジア太平洋地域担当プレジデントを務めるSumir Bhatia氏
その前に、Lenovoのエンタープライズ事業について少しさかのぼっておこう。といっても、同事業は2014年10月にLenovoがIBMのx86サーバー事業を買収したのが本格的なスタートで、そこからすると6年目に入ったところだ。
これまで筆者が取材で得た情報では、2017年4月から事業推進体制を大幅に強化し、事業戦略として「ハイパースケール」「ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)」「ソフトウェアデファインドインフラストラクチャー(SDI)」「トラディショナルIT」の4分野に注力していくことを打ち出した。
そして、今はどうか。Bhatia氏によると、まずDCGの業績の推移については2020年度第2四半期(2019年7~9月期)まで9四半期連続で増益を記録。売り上げベースでは汎用のx86サーバーなどで厳しい競争が続いているものの、上記の戦略商品が好調に推移しているという。
「LenovoはPCで世界最大手だが、エンタープライズ事業の割合はまだ小さい(筆者注:Lenovoの売上高全体の約1割)。収益を着実に上げながら、戦略分野に注力して事業拡大を図っていきたい」(Bhatia氏)というのが基本姿勢だ。
さて、話をIXに戻そう。Bhatia氏によると、IXとは「データセンターによるインフラとPC、スマートフォン、センサーなどのデバイスが全てつながり、そこでやりとりされるデータから人工知能(AI)を活用して適切なインサイト(洞察)を私たちに提供してくれる環境を実現すること」だという。
このIXに必要な要素として同氏は、「データ」「コンピュートパワー」「アルゴリズム」の3つを挙げた。アルゴリズムをAIと捉えれば、この3つのキーワードは同氏のIXの説明にすべて埋め込まれている。その上で語ったのが、冒頭の「DXを超えたIX」発言である。
なぜ、IXはDXを超えるのか。同氏は「DXは限定された範囲にとどまることも少なくない。それに対し、IXはAIによるインサイトの提供に注力し、しかも企業ならば全社で取り組む、すべてを包含するという意味合いが強いからだ」と説明した。
つまり、IXは企業におけるDXの現状を踏まえた上で、もう一歩先を行くメッセージを打ち出したい――というLenovo DCGの強い思いから発信されたものだ。正直なところ、“IX”という表現そのものに斬新性は感じないが、その意味には同社の強い思いが込められているのである。