新型コロナウイルスの影響で、多くの企業が従業員のワークスタイルを大きく変える必要に迫られている。在宅などで仕事を行うテレワークなどが必須になってきているが、そこで大きな問題になるのが、社員同士のコミュニケーションだ。
携帯電話やメールなどの登場で、コミュニケーションの仕方が変わってきているが、これらは基本的に1対1のコミュケーションツールであるため、日本の企業のように部や課などグループ単位で仕事を進めていくスタイルだと、グループ内でのコミュニケーションの密度が下がり、仕事のパフォーマンスが低下する。
そこでテレワークや自宅勤務を前提としたコミュニケーションツールを導入する必要があるだろう。こういった用途に合うのがグループチャットだ。代表的なグループチャットシステムである「LINE WORKS」「Microsoft Teams」「Slack」の3つを紹介していく。今回はSlackを取り上げる。
テレワークで有効なグループチャット--企業向け老舗のSlack
企業向けのグループチャットとして最も有名なのがSlackだ。Slackは多くのユーザーに使われているため、日々新たな機能が追加されている。
Slackは、グループチャットによって大量のメールをさばく作業からユーザーを解放してくれるとうたう
グループチャット以外に、さまざまなアプリケーションと連携することで、企業ビジネス コラボレーション ハブ(業務の基盤)として利用できる
Slackのブラウザー版の画面
iPhone版のSlack画面
そこで今回はSlack Japanのシニアテクノロジーストラテジストを務める溝口宗太郎氏に話を聞いた(取材は2020年2月17日)。
--どのような企業がSlackを採用しているのか。
SlackはIT系企業が採用しているイメージが強いものの、現在はさまざまな企業や団体で利用されている。IT系企業でいえば、ヤフーやLINEなどが全社採用している。また、近畿大学は大学職員などがSlackを利用していたが、コミュニケーションに大きなメリットがあることを確認して、学生を含めてコミュニケーション基盤として採用した。近畿大学の利用規模は学生だけで3万人にも上る。
もちろん、数十万人の企業でもSlackは便利だが、数百人の企業でもコミュニケーション ツールとして大きなメリットがあるとして採用されている。例えば、長野県のカクイチは133年の歴史を持つ工業用の樹脂ホースを製造している(※創業当初の明治時代は小さな金物店から始まった)が、現在は太陽光発電やホテル、アクアソリューション、倉庫、ミネラルウォーター、内装左官材など非常に幅広い事業を行っている。
ただ、同社は老舗企業ということでIT化が遅れ、数年前までは多くの部署でファクシミリを使ったやりとりだったという。従業員にiPhoneを配布する時に、コミュニケーション基盤としてSlackを採用された。iPhoneで簡単に写真を付けたりメッセージだけでなく、リアクション(絵文字など)を利用できるSlackは非常に便利だったといわれた。
また、社員が情報を共有できるということが便利だったといい、例えば、ある営業担当者が顧客先や現場で問題が起きた時にSlackのチャンネルに情報をアップすると、多くの従業員からどうすればいいのかという情報やアイデアが寄せられてくる。今までのように、関係者が集まって会議をしているよりも、結果が出るのが非常に速くなっているという。Slackにより組織のあり方自体が変化したという声をいただいている(カクイチのインタビュービデオ)。
Slack導入後は、電子メールを確認する時間、会議の時間、情報を探す時間などが少なくなる。余計な作業が少なくなった分、働き方改革に力を入れるか、従業員のスキルアップのために時間を費やすこともできる