福井銀行(福井県福井市、従業員数1427人、店舗数98)は、新型コロナウイルス発生後にセキュアなテレワーク環境を3週間で実現している。職員が個人所有するPCなどを業務に活用するBYODを採用しており、WVDと日本マイクロソフトのパートナーFIXERが提供するクラウドフルマネージドサービス「cloud.config」を組み合わせている。これにより、高いセキュリティのもとで業務効率化と事業継続性を短期間で実現した。
文化財をデジタル化して保護する事業を展開するとっぺん(佐賀県佐賀市、従業員数17人)は、場所にかかわらず優秀な人材を獲得し、長く働き続けてもらえる環境をいかに整えられるかが課題となっていた。オンラインでのファイルのやり取りや画面を共有しながらのウェブ会議の必要性を感じてTeamsを採用。テレワークを導入することで、遠隔地での人材獲得を実現していた。新型コロナウイルス発生後、既に導入していたテレワークを他の従業員にも適用することで業務を継続。今後も働き方の1つの選択肢としてリモートワークを継続する予定だという。
このように、緊急対応のフェーズで導入したリモートワークにより、企業は社内外でつながりをなんとか保つことができるようになる。だが、沈静化のフェーズで事業回復を考える際、リモートワークをより円滑にする必要がある。
先に紹介した調査でも、リモートワーク実施における課題として、紙ベースのワークフローへの対応、ネットワークインフラ、ツールの整備、リモートワーク用デバイス整備と調達、社内制度やポリシーがあることが明らかになっている。
沈静化のフェーズでこのような課題を解決した事例として、山口フィナンシャルグループ(YMFG、山口県下関市、連結従業員数4549人)IT統括部の來島友治氏が自社の取り組みを紹介した。山口県、広島県、福岡県に銀行を持つほかに証券会社なども抱える同社は、Microsoftのモバイル端末「Surface」とTeamsを活用したテレワーク環境を構築し、3月初旬から本部社員を中心に移行している。
來島友治氏
同社では2月下旬、新型コロナウィルス感染拡大の対策として、リモートワーク移行の検討を開始した。その結果、リモートワーク向けにインフラ整備が急務ということが明らかになった。リモートワーク用PCが不足していることから、他の用途を予定していたSurfaceを急きょ転用して準備。また、遠隔からの会議は拠点と拠点を結んだ専用のテレビ会議システムを主に利用していたが、リモートワーク環境下では個々のPCを利用するようになる。そのため、リモートワーク導入までにTeamsの使用方法を習得できるよう、ユーザートレーニングを実施。その結果、3月初旬から、店舗での窓口業務など対面対応が必要な社員以外は、基本的にテレワークでの業務に移行することができた。
この移行を可能にした背景として、それまでに実施していた取り組みの結果があると來島氏は述べる。まず、同社では、傘下の山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行も含めて個別のグループウェアが使われていたことから、「Office 365」を2019年1月に導入。組織を横断した情報連携、在席状況やスケジュールの共有、外出先などからのグループウェアの利用における課題を解決していた。
2019年8月から2020年3月にかけては、ペーパーレス化の推進にも取り組んでいる。紙と印鑑を必要とする社内申請類を中心に廃止したり電子ワークフローに移行したりすることで、本部業務で使用している紙の帳票約1200をペーパーレス化。また、ペーパーレス会議を推進するため、インフラ整備も進めており、2020年4月での本部印刷枚数96万枚(前年同月比70%)を削減した。
これら2つに加えて、リモートワーク用PCを準備するための取り組みを來島氏は挙げている。2月の時点でリモートワークに使用可能なPCが約100台しかなく、約600台が不足していることが判明。その時点でPC購入は、納品までの時間もかかることから、難しいと判断。店舗の営業担当者用に配布を予定していた600台のSurfaceを急きょ再キッティングして転用した。