SUSE、Kubernetes管理ツールのRancher Labsを買収へ

Steven J. Vaughan-Nichols (ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 吉武稔夫 (ガリレオ)

2020-07-09 14:12

 Linuxディストリビューションとクラウドを手がける大手ベンダーの独SUSEは現地時間7月8日、Rancher Labsを買収すると発表した。米国カリフォルニア州クパチーノを拠点とするRancher Labsは、Kubernetes管理基盤「Rancher」を主力製品とする株式非公開のオープンソース企業。アクティブユーザー数は3万7000人を超え、同製品のダウンロード数は1億本に及ぶ。

 Rancherは、Kubernetesに関連したソフトウェア群を提供する。ほぼ全てのインフラでKubernetesのクラスターを展開でき、運用管理やセキュリティの課題に対応する。具体的には、「Google GKE」「Amazon EKS」「Microsoft AKS」といったCloud Native Computing Foundation(CNCF)認定のKubernetsディストリビューションをサポートしている。

 Rancherのソフトウェア群を用いれば、認証やアクセス制御、監視といった処理を一元化し、ハイブリッドクラウド環境でKubernetesクラスターを管理することも可能だ。それにより、Kubernetesクラスターをベアメタルやプライベートクラウド、パブリッククラウド、「vSphere」にデプロイし、全体に同じセキュリティポリシーを適用してセキュアな状態を保てる。Rancherは、Kubernetesネイティブのデプロイツール「Helm」や独自のアプリカタログを利用して、そのような環境におけるアプリの展開や管理を実行する。それによって、1回のデプロイでマルチクラウド環境においてクラスターの整合性を維持できる。

 これは全て純粋なオープンソースのスタックで行われている。SUSEは、ベンダーロックインのないオープンソース技術の提供を継続する。Rancherは、引き続き独立した企業として運営し、オープン路線も維持して複数のKubernetesディストリビューションとマルチOSをサポートする。

 Rancher Labsの創設者で最高経営責任者(CEO)のSheng Liang氏が自信を見せるのは、KubernetesがIT戦略の柱になったからだ。Kubernetesは今ではハイブリッドクラウドの基盤技術となっている。Gartnerは、クラウドネイティブのアプリケーションやインフラがますます普及することで、コンテナー管理の利用が増えると予測している。特にKubernetesは、成熟経済圏における大企業の採用率が、2020年の35%未満から増加し、2024年までに75%を超えるという。

 今回の買収は、投資会社EQTがMicro FocusからSUSEを買収し、2019年3月に成長を目標としてSUSEを独立企業にして以来、同社の拡大に向けた最初の一歩だ。これは、SUSEの財務面での堅調な勢いを受けたものだ。2020会計年度第2四半期に、SUSEは年間契約金額(ACV)が前年同期比で30%増加し、クラウドの売上高は世界全体で前年同期比70%増に達した。

 Rancherの買収は、規制当局による承認など、通例の条件を満たせば、2020年10月末までに完了する。SUSEにとっては、Kubernetes分野での大きな前進だ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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