松岡功の「今週の明言」

BCPを拡充せよ、デル幹部が説く「リモート環境での業務継続の重要性」

松岡功

2020-08-21 10:31

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、デル・テクノロジーズ上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏と、日本オラクル執行役員クラウド・アプリケーション事業統括ERP/HCMクラウド事業本部の善浪広行氏の発言を紹介する。

「これからはリモート環境での業務継続にフォーカスを当てた投資の強化が必要だ」
(デル・テクノロジーズ上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏)

デル・テクノロジーズ上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏
デル・テクノロジーズ上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏

 デル・テクノロジーズは先頃、2020年2月に発表した約470社の国内中堅企業を対象とした「IT投資動向調査2020」の追跡調査を実施し、2020年1月調査と6月調査を比較して投資動向の変化や顕在化した課題に関する分析結果を発表した。瀧谷氏の冒頭の発言はオンライン形式での発表会見で、新型コロナウイルス感染拡大に向けた業務継続対策への投資の重要性を説いたものである。

 デルがこの調査で従業員数100人から1000人未満の中堅企業を対象としたのは、国内に約4万3000社あるうち、同社がその4分の3にあたる3万1500社と取引しているからだ。つまり、同社にとって中堅企業は強固な顧客基盤なのだ。従って、この調査も同社にとって非常に重要なマーケティングリサーチとなる。

 調査全体の概要については関連記事をご覧いただくとして、ここでは調査結果の中でトピックの1つに挙げられたBCP(事業継続計画)対策に注目したい。

 瀧谷氏は追跡調査のハイライトとして、図に示すように3項目を挙げた。その1つであるBCP対策は、5カ月で予算が4%減額されたという。

「IT投資動向調査2020」追跡調査のハイライト(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)
「IT投資動向調査2020」追跡調査のハイライト(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)

 ちなみに、中堅企業の2020年度における年間IT投資額の平均は、1月調査1470万円から6月調査1495万円(1.0%増)とほぼ据え置きだった。その内訳を見ると、セキュリティ対策費用が198万円で22.9%増額したのに対し、BCP対策費用は105万円で4.0%減額となったのである。

 こうした動きの背景には、Windows 10に全台移行済みの企業が53.8%(27.3%増)と大幅に進捗したことからも、OS刷新を伴うノートPC化に加えて、テレワーク実施に伴うセキュリティ対策への投資が進んだことがあるようだ。

 一方、BCP策定済み・策定中の企業は45.7%となり、1月からの5カ月間で7.6%も増加した。しかし、リモートワークで対応できる業務が限定的で、業務継続にフォーカスを当てた投資には不十分だった実態が、調査結果で明らかになった。

 瀧谷氏はこうした調査結果を踏まえ、「これからは経営層や管理職、IT担当、現場の社員が共通の理解のもと、自宅からもオフィスと同等、あるいはそれ以上の利便性を実現して、これまで以上に業務を効率よく続けられるように、リモート環境での業務継続にフォーカスを当てた投資の強化が必要となる」と語った。冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。

 BCPのパンデミック(感染症の大流行)対応については、状況が少し落ち着いた段階で、組織全体で得られた教訓を出し合い、対策の内容をしっかりと拡充していきたいものである。

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