本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SUSEソフトウェアソリューションズジャパン代表取締役社長の関原弘隆氏と、富士通 金融システム事業本部デジタルビジネス事業部シニアディレクターの奥田琢馬氏の発言を紹介する。
「皆さんに面白い会社と言われるようになりたい」
(SUSEソフトウェアソリューションズジャパン代表取締役社長の関原弘隆氏)
SUSEソフトウェアソリューションズジャパン代表取締役社長の関原弘隆氏
ドイツSUSEの日本法人SUSEソフトウェアソリューションズジャパンは先頃、8月1日付けで関原氏が社長に就任したのに伴い、事業戦略についてオンライン形式で記者説明会を開いた。冒頭の発言はその会見で、関原氏が同社をどのような会社にしたいかについて語ったものである。
SUSEは1992年に創業したオープンソースカンパニーで、主力の商用Linux OS「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)」はメインフレームやインメモリーデータプラットフォーム「SAP HANA」、ハイパフォーマンスコンピューター(HPC)など、ミッションクリティカルな処理が求められる市場で高いシェアを保持している。
関原氏によると、SUSEの業績はこの9年間増収を続けており、2003年からビジネスを開始した日本でも同様に推移してきたという。現在、SUSEが展開しているソリューションの概要は図1の通り。左上のシステム基盤、左下のクラウドアプリケーションデリバリープラットフォーム、右上のエッジコンピューティング、右下の人工知能(AI)といった4つの領域からなる。SLESを皮切りに、今ではこれだけの領域をカバーしている。
SUSEのソリューション概要(出典:SUSEソフトウェアソリューションズジャパンの資料)
では、関原氏は日本法人の新社長として、日本でこれからどのようにビジネスを展開していくのか。同氏は図2に示すように、「オープンソースコミュニティへの貢献」「ダイレクトセールス」「パートナーとのアライアンス強化」「市場認知度の向上」「組織強化、拡充」といった5つの施策を挙げた。それぞれの内容については図中の要点を見ていただくとして、ここでは2つの点について関原氏の説明を紹介しておこう。
SUSEの日本でのビジネス方針(出典:SUSEソフトウェアソリューションズジャパンの資料)
1つは、ダイレクトセールスについて。「これまで日本でのビジネスはパートナー経由の間接販売が中心だった。引き続き間接販売は強化していくが、今後はさらにハイタッチのダイレクトセールスに注力して、お客様の声を直接聞いていきたい」という。
もう1つは、市場認知度の向上について。「SUSEというと、Linuxの老舗というイメージだけが、一般的に定着している印象がある。『知らない』と言われるよりはまだいいが、今では幅広い領域でビジネスを展開していることを、もっと知ってもらえるようにしないといけない。また、SUSEは職人気質の技術者集団でコストパフォーマンスの高い製品を提供しているという自負があるが、一方でマーケティングにも注力する必要がある。そうした点を改善して認知度を上げていきたい」とのことだ。
そして、関原氏がこうした戦略の話の最後に語ったのが、冒頭の発言である。どんな「面白い会社」にするのか。SAPジャパンで約23年間、要職を歴任してきた同氏の経営手腕に注目したい。