Microsoftの最高経営責任者(CEO)を務めるSatya Nadella氏は、同社が5月にオンラインで実施した開発者向けイベント「Build 2020」で、「Windows Subsystem for Linux(WSL)2.0」が近々、LinuxのGUIとアプリケーションをサポートするようになると発表していた。そして、9月に開催された「X.Org Developers Conference」で、同社のパートナー開発リードであるSteve Pronovost氏が、WSL内でグラフィカルなLinuxアプリケーションを実行できるようになったことを明らかにした。
これまでも、グラフィックエディターの「GIMP」、電子メールクライアントの「Evolution」、オフィススイートの「LibreOffice」など、GUIを使用するLinuxアプリをWSL上で動作させることは可能だった。しかし、そうしたアプリをスムーズに動作させるには、サードパーティー製の「X Window」ディスプレイサーバーをインストールし、WindowsとLinuxの両方で調整を行う必要があった。「X Window System」が、ほぼ全てのLinux GUIの基盤となっているためだ。
このため、Microsoftは「Wayland」ディスプレイサーバーをWSLに移植した。Waylandは、X Windowと互換性がある最も人気の高いサーバーだ。WSL2では、リモートデスクトッププロトコル(RDP)を介して、グラフィカルなLinuxアプリケーションをWindowsのメインディスプレイに接続する。つまり、同じデスクトップ画面で、LinuxとWindowsのGUIアプリケーションを同時に実行できるようになった。
Pronovost氏は次のように説明している。
「WSLは基本的に、Windowsがホストする仮想マシンの中でLinuxを実行している。そして、アプリケーション(コンソール、そして今回からGUI)をユーザーのWindowsデスクトップに統合して、Win32とLinuxの両アプリケーションを統一されたエクスペリエンスとして提供している。Linuxは仮想マシンの中で動作しているため、GPUへの直接アクセスが必要なネイティブGPUドライバーを実行できない。しかし、GPU-PV(GPU Paravirtualization、GPU準仮想化)によって、ホストGPUを実質的にLinuxに投影することで、リソースの固定パーティショニングをすることなしに、LinuxとWindowsの両方のプロセスが同じ物理GPUを共有できるようになる」
MicrosoftのWSLプログラムマネジャーのCraig Loewen氏はTwitterへの投稿で、サードパーティー製のX Serverと、Waylandサーバーを使用した場合の違いは、「サーバーを起動する必要がないことだ」と述べている。また、ドロップシャドウ効果やLinuxアイコンのサポートなど「Windowsとの魅力的な統合」を提供しているとのこと。
Loewen氏は「最もニーズの高いアプリを実行させること、そして主に統合開発環境(IDE)に集中したかったので、完全なデスクトップ環境で広範なテストは実施していない」が、Linuxウェブブラウザーも動作させることが可能だと述べている。
しかし、喜ぶのは早過ぎるかもしれない。「ベータチャネルでの提供時期はまだ未定だ。しかし、今後2カ月以内にInsiderテスターは試用できるようになる見通しだ」(同氏)
Microsoftは以前から、LinuxとWindowsの統合に取り組んでいた。同社は2016年に、Windows 10で「Bash」シェルを動作できるようにした。BashとWSLを使えば、大半のLinuxシェルツールと人気の高いLinuxプログラミング言語を実行できる。
さらに最近では、「Windows 10 Insider Preview ビルド 20211」で、WindowsユーザーはLinuxのファイルシステムにアクセスできるようになった。これには、Windowsではネイティブにサポートされていない「ext4」も含まれる。このため、WindowsとLinuxを異なるディスクでデュアルブートしても、WindowsからLinuxのファイルシステムにアクセスできる。管理者権限により、「Windows File Explorer」と「PowerShell」ウィンドウの両方から、Linuxファイルへのアクセスが行える。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。