日本オラクルは11月4日、日本を含む世界11カ国1万2347人を対象にした、コロナ禍によるメンタルヘルスや人工知能(AI)の活用に関する調査「AI@Work 2020」の結果を発表した。日本のAI利用率は世界11カ国で最下位ながらも、87%が不安やストレスの相談相手としてロボットやAIを受け入れると回答している。
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏は「日本はリモートワークを活用できておらず、生産性が全体的に下がっている一方で、職場でのAIやロボットなどテクノロジーの活用については抵抗感が少ない。また、コロナ禍によるテクノロジーへの投資意識は高まっている。コロナ禍が日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるきっかけとなる」と調査結果を考察した。
米本社OracleとWorkplace Intelligenceが調査主体となり、英調査会社のSavantaが7月16日~8月4日に米国、英国、アラブ首長国連邦(UAE)、フランス、イタリア、ドイツ、インド、日本、中国、ブラジル、韓国の11カ国に在住する22~74歳の1万2347人を対象に調査した。日本とグローバルを比較してみていく。
コロナ禍で職場環境のストレスと不安を覚えた割合は70%(11カ国の平均=グローバルは61%)。内訳を見ると「普段よりも強いストレスを感じた(37%)」「ワークライフバランスの喪失(30%)」「コロナ禍による悪影響はない(30%)」といった回答が上位に並ぶ。日本の従業員に要因を尋ねると、「業績基準達成にかかるプレッシャー(48%)」「不公平な報酬(39%)」「チーム連携の欠如(39%)」が上位3位にランクインした。
今回の調査では、メンタルヘルス支援手法としてAIやロボットへの期待が大きいことを明らかになっている。日本の74%の従業員は組織が従業員のメンタルヘルスを保護する必要があると回答(グローバルは76%)、33%の企業はコロナ禍でメンタルヘルス支援施策を追加したと回答した。
また、日本の49%(グローバルは68%)が仕事上のストレスや不安を上司や同僚ではなく、AIやロボットに話したいと回答、メンタルヘルス支援をカウンセラーなどに頼りたいという回答は13%(グローバルは80%)にとどまっている。
だが、AIやロボットなら「ジャッジメント・フリー・ゾーン(決めつけのない環境)が与えられる(42%、グローバルは34%)」「先入観のない感情のはけ口を提供してくれる(27%、グローバルは30%)」「医療に関する質問にも迅速に回答してくれる(26%、グローバルは29%)」といった声が多かった。
コロナ禍はリモートワークを強いているが、生産性が向上した割合は15%(グローバルは36%)、逆に低下した割合は46%(グローバルは41%)。リモートワークで労働時間が短縮した割合は34%(グローバルは25%)、増加した割合は21%(グローバルは52%)といずれも日本は最下位である。生産性変化の逆転現象が生じているのはドイツ、韓国、日本の3国、労働時間変化は韓国、日本の2国のみだった。
本来であれば物理的な移動を必要としないリモートワークやオンライン会議の効率性を踏まえれば、生産性の向上や労働時間の短縮につながるはずである。岩本氏は「リモートワークを有効活用できていない実態が浮かび上がっている」と私見を述べた。