IT予算、増加基調を維持--コロナ禍で減速するも、リーマンショックと異なる

阿久津良和

2020-11-16 07:00

 アイ・ティ・アール(ITR)は11月12日、「国内IT投資動向調査2021」を発表した(税別価格12万8000円で購入可能)。調査を踏まえて同社アナリスト3人がオンライン座談会でそれぞれの見解を明らかにした。

 今年で20周年を迎えた今回の調査結果では、IT予算の増減傾向を指数化した「IT投資インデックス」が減速する動きをコロナ禍で見せたものの、リーマンショックの影響を受けてマイナス値となった2009年度とは異なり、増加基調を維持している。

 ITRは国内企業でIT戦略やIT投資の意思決定に関与する役職者を対象に、IT予算の増減傾向やIT製品・サービスの投資意欲の動向変化を8月21日~9月1日に調査した。有効回答数は2667件となる。

 IT投資インデックスは20%以上の減少をマイナス20ポイント、10%から20%未満の減少をマイナス15ポイント、10%未満の減少をマイナス5ポイント、横ばいをゼロポイント、10%未満の増加をプラス5ポイント、10%から20%未満の増加をプラス15ポイント、20%以上の増加をプラス20ポイントとして積み上げた回答数で除算した値だ。

 注目が集まる2020年度の実績値は1.93(予測値は2.15)。2019年度の2.62(予測値は2.68)から減少しているが、リーマンショック時(2009年度)のマイナス3.80と異なり、プラス値を維持している。

 だが、リーマンショック後は上り調子だった実勢値は2018年度の2.74ポイントをピークに下降しており、ITRは2021年度の予測値として1.72ポイントを付けている。

ITR シニア・アナリスト 三浦竜樹氏
ITR シニア・アナリスト 三浦竜樹氏
ITR シニア・アナリスト 舘野真人氏
ITR シニア・アナリスト 舘野真人氏

 この結果についてシニア・アナリスト 三浦竜樹氏は「(2019年度と比較して)マイナスイメージを持ちがちだが、IT予算を増加させた企業が多く、予想を上回った。コロナ禍でもよくとどまっている、というのが正直なところ」と感想を述べた。

 シニア・アナリスト 舘野真人氏も「IT投資インデックスと名目GDP成長率を重ね合わせると、東日本大震災以前は連動しているが、以降は異なる動きを見せている。IT投資の必要性は認識されており、リーマンショック時のように激減する可能性は低い」と推測する。

 企業に「最重要視するIT戦略上の課題の変化」を聞くと、1位「売り上げ増大への直接的な貢献」、2位「業務コストの削減」、3位「顧客サービスの質的な向上」が並び、例年と変化がない。だが、2020年度は9位だった「従業員の働き方改革」が8位へ、同じく昨年は7位の「既存システムの統合性強化」が6位へランクインした。

ITR シニア・アナリスト 水野慎也氏
ITR シニア・アナリスト 水野慎也氏

 シニア・アナリスト 水野慎也氏は「建設や不動産、サービス、卸売り・小売りといった対面ビジネスが“働き方改革”を押し上げた」と結果を分析する。

 目立ったところでは昨年17位の「IT部門スタッフの人材育成」が13位に上昇。本件の調査は“最重要視”する項目を記述する仕組みだが、「1~3位のみ選択するため、(それぞれにポイントを割り振った)重み付けポイント計算を見るとさほど多くない」(三浦氏)と注意をうながした。

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